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イーゼルの前の自画像(画家としての自画像)
(Self-portrait as Painter) 1888年
65×50cm | 油彩・画布 | ファン・ゴッホ美術館
後期印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホ、パリ時代の代表的な自画像作品のひとつ『イーゼルの前の自画像(画家としての自画像)』。ゴッホが南仏アルルへと旅立つ直前となる1888年の1月から2月にかけて制作された本作は、画架の前に絵筆を持つゴッホ自身の≪自画像≫作品で、パリ時代にゴッホは28点もの自画像作品を手がけているが、本作はその中でも特によく知られた作品である。画面中央に配されるゴッホ自身の姿は、パリの都会的な衣服を身に着けるわけではなく、非常に素朴な労働者階級の衣服を着ている。視線は本作を観る者へと真っ直ぐ向けられており、ゴッホの画家としてのある種の決意表明が感じられる。画面右側へは画中のゴッホが取り組んでいるのであろう絵画作品の画架(イーゼル)が、画面下部では色彩豊かな調色板(パレット)と数本の絵筆が画家の力強い右手によって握られている。本作の姿態には、現在、ルーヴル美術館に所蔵され、ゴッホ自身も目にしていたであろう
オランダ絵画黄金期の巨匠
レンブラントの自画像作品からの影響が、闊達な筆触には
フランス・ハルスからの影響が指摘されている。またさらに本作の筆触分割的な色彩描写や点描的描写にはパリ時代に親しくなった
ジョルジュ・スーラや
ポール・シニャックなど新印象派の表現へと傾倒も見出すことができる。なおパリに時代に制作された自画像作品の中で本作以外では、1887年に制作された同じくアムステルダムのファン・ゴッホ美術館に所蔵される『
暗色のフェルト帽を被った自画像』などが著名である。
関連:
1887年制作 『暗色のフェルト帽を被った自画像』