2007/05/04掲載
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アプサントを飲む男(Le buveur d'absinthe) 1858-1859年181×106cm | 油彩・画布 | ニイ・カールスベルグ美術館
簡素な画面に立つ路上生活者。コペンハーゲンのニュー・カールスベア美術館に所蔵される本作に描かれるのは、ニガヨモギの根から抽出する≪アプサント≫と呼ばれた安価で毒性の強い緑色の蒸留酒の水割りを飲む路上生活者で、この路上生活者はルーヴル近辺では比較的名が通っていた屑拾いで、画家の近所に居たコラルデという男をモデルにして描かれている。
【簡素な画面に立つ路上生活者】
安価で毒性の強い緑色の蒸留酒の水割り≪アプサント≫。本作は、社会的、文学的な主題への関心を示した、最も初期の自然主義的作品としても重要視されており、この自然主義的な描写は、師トマ・クテュールとの決別を意味するほか、サロン出品時に批判の対象となった最初の作品でもある。
【緑色の蒸留酒の水割り≪アプサント≫】
当時、社会問題化していたアルコール依存。パリではアプサントを始めとする度の強い酒による重篤なアルコール依存症が社会問題化しており、本作においても画面中央左部分に描かれるアプサントのほか、地面に転がる酒瓶、男の纏う(洗練された紳士的服装の風刺・揶揄である)古着の黒衣などにマネの社会性や文学性を帯びた絵画的挑戦を強く感じさせる。
【社会問題化していたアルコール依存】 |