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ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル
(Yvonne et Christine Lorelle au piano) 1897年
73×92cm | 油彩・画布 | オランジュリー美術館(パリ)
印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワール作『ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル』。本作はルノワールのほか
エドガー・ドガ、
ベルト・モリゾなどとも交友のあった、画家であり収集家としても知られていたアンリ・ルロルの二人の娘イヴォンヌとクリスティーヌをモデルに、当時裕福な富裕層の間で流行していた≪ピアノ≫を弾く姿を描いた作品である。画家は本作以前にも『
ピアノに寄る娘たち』など本画題≪ピアノを弾く娘≫を度々手がけているが、本作ではルノワールの色彩の対照性への興味が顕著に示されている。画面中央で白い上品な衣服に身を包むイヴォンヌ・ルロルは交差させるように(ピアノの)鍵盤の上へ置いている。その奥では鮮やかな赤い衣服を身に着けたクリスティーヌ・ルロルが両手でイヴォンヌを囲むかのように寄り添っている。二人の身に着けた白色、赤色の衣服の色彩的コントラストは画面の中で最も映えており、その強烈にすら感じられる対照性は観る者の視線を強く惹きつける。さらに本作にはピアノの黒色と鍵盤の白色、ピアノ(黒色)とイヴォンヌ(白色)、ピアノ(黒色)とクリスティーヌ(赤色)など様々な要素で色彩的コントラストが試みられている。また画面背後の薄黄緑色の壁に飾られる踊り子(バレリーナ)と競馬を描いた二枚の絵画はアンリ・ルロルが購入した
エドガー・ドガの作品であり、ルノワールは画面内に
ドガの作品を描き込むことによって、友人
ドガへの友情と、画家としての明確な(差異のある)態度を表している。