Introduction of an artist(アーティスト紹介)
■ 

俵屋宗達 Tawaraya Sotatsu
江戸時代前期 | 日本 | 琳派・絵師




おそらく江戸時代前期(17世紀)に活躍した京都を代表する絵師のひとり。姓は野々村、号は「伊年」あるいは「対青軒」と伝えられているも、その生涯の詳細においては不明な点が多い。京都の名家出身で、陶芸や蒔絵、書などに才能を発揮するほか、芸術家や職人を育てることに力を注いだ当代一流の文化人である本阿弥光悦に見出され、光悦や烏丸光広などの書巻に下絵を施すなど、当時を代表する芸術家と共作で作品を手がけていたことが確認されている。僧侶に準じて仏師・絵師・連歌師・医師などに与えられた称号≪法橋(ほつきよう)≫の地位に至ったと考えられているが、ほとんど未詳である。伝統的な大和絵を特異な構図とたらし込みなど独特の技法により近世装飾画へと再生・昇華させた新様式、所謂≪琳派≫を確立、尾形光琳など琳派絵師の先駆となった。代表作『風神雷神図屏風』『蓮池水禽図』など。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
■ 

舞楽図屏風

 (Bugaku Dancers) 桃山-江戸時代(17世紀)
各155.5×170cm | 2曲1双・紙本金地著色 | 醍醐寺(京都)

琳派の始祖、俵屋宗達の珠玉の傑作、重要文化財『舞楽図屏風』。京都の醍醐寺に伝わる2曲1双で制作された、法橋宗達(※法橋:朝廷が与える絵師の最高位)の署名が残される本屏風は、奈良時代あたりに亜細亜大陸諸国から伝来した舞と音楽の融合芸能文化で、公家や神道寺院とも縁の深い≪舞楽(舞を伴う雅楽の総称)≫中、採桑老、納曽利(以上右隻)、羅陵王、還城楽、崑崙八仙(以上左隻)という5つの有名な舞楽演目を描いた作品である。画面左側(左隻)には、大空を遊舞する鶴を表す≪崑崙八仙(ころばせ)≫を舞う緑装束の4人、蛇を発見し喜ぶ姿を表した≪還城楽(げんじょうらく)≫を舞う赤装束の者、龍面を身に着け将兵を鼓舞する姿を表した≪羅陵王(らりょうおう)≫を舞う同じく赤装束の者が配され、画面右側(右隻)には、羅陵王の番舞・答舞でもある宮中へ舞い降りた雌雄2頭の龍が踊る様子を表す≪納曽利(なそり。納蘇利とも呼ばれる)≫を舞う緑色の裲襠(うちかけ・りょうとう)を身に着けた2者、そして長寿薬を捜し求める死を前にした老人の哀姿を表す≪採桑老(さいそうろう)≫を舞う白装束の老人が配されている。さらに右隻右上には当時から有名であった醍醐の桜松が、左隻左下には大太鼓と大鉦鼓が描き込まれている。≪舞楽≫という主題は平安時代から続く極めて一般的な図様であり、宗達も本作で舞楽者そのものの姿は過去の舞楽図から姿態的引用をおこなっているが、本作で注目すべきはその絶妙な空間的構成と各人物の配置にある。やや高い視点から各舞楽を捉えることによって金地の余白へ宇宙的な空間の広がりと不思議な浮遊的感覚を与えることに成功している。さらに羅陵王と還城楽と呼応させるかのように納曽利を配置(※通常、納曽利を描く場合は並列に配される)し、姿態的な相似性を示している。そして採桑老は納曽利(上方)へ、納曽利(上方)は還城楽へ、還城楽は崑崙八仙へ、崑崙八仙のひとりは還城楽へ、羅陵王は採桑老へそれぞれ視線を向けさせることで空間的循環をおこなっている。この緊密・緊迫的でありながら斬新で独特の視点による芸術様式は、後世に多大な影響を与えるだけでなく今なお人々を魅了し続ける。なお6曲1双が通常であった屏風画に2曲1双というアプローチをおこなった本作の斬新性も特筆すべき点に挙げられる。

関連:『舞楽図屏風』全体図左隻拡大図右隻拡大図

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

風神雷神図屏風

 (Wind God and Thunder God Screens)
17世紀(江戸時代)
各169.8×154.5cm | 2曲1双・紙本金地著色 | 京都 建仁寺

琳派を代表する絵師 俵屋宗達の至高の代表作、国宝『風神雷神図屏風』。17世紀初頭の京の豪商ウツダキンノリの依頼により制作されたと推測される本作は、金箔が一面に貼られる屏風の中に、右側から黒雲に乗り風を操りながら舞い降りる風神の姿を、左側から力強く雷太鼓を打ち鳴らす雷神の姿を描いた俵屋宗達の代表作として古来から伝えられると共に、今日、我々が頭に描く風神・雷神の形象を決定付けた作品でもあるが、作品に関する記録や文献はおろか、画面に款記も印章も残されていない。豪華で目を惹く屏風一面の金箔は平面的かつ装飾的でありながら、画面に無限性を秘めた宇宙的な立体的空間を観る者に感じさせる。また、銀泥と墨によるたらし込み技法を用い描いたと考えられる風神・雷神の乗る黒雲の表現は質量感に溢れ、金箔による空間感覚をより一層強調する。風神・雷神の表現においても当時としては極めて独創的であり、対をなす神の姿を調和と均整を感じさせる白色(雷神)と緑色(風神)で描いたことは、画家の並外れて優れた色彩感覚の表れであるほか、嬉々として舞い降りるかのような神の表情は、観る者に強烈な印象を与える。なお本作が後世に与えた影響は甚大であり、宗達と同じく琳派を代表する絵師である尾形光琳や、(間接的に)幕末に活躍した江戸琳派の酒井抱一が模作を残している。なお本作は京都の建仁寺が所有権を有しているものの、保存状態や保護設備、資料的価値等の点を考慮し、現在は京都国立博物館に収蔵され、建仁寺には精密なレプリカが展示されている。

関連:尾形光琳筆 『風神雷神図屏風』
関連:酒井抱一筆 『風神雷神図屏風』

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示


Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション