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風神雷神図屏風
(Wind God and Thunder God Screens)
18世紀(江戸時代)
各166×183.5cm | 2曲1双・紙本金地着色 | 東京国立博物館
江戸文化最大の絵師のひとりとして高い評価を得ている琳派の絵師 尾形光琳の屏風絵の中でも特に重要視される作品のひとつ、重要文化財『風神雷神図屏風』。本作は光琳が深く感銘と影響を受けていた17世紀を代表する絵師
俵屋宗達が手がけた傑作『
風神雷神図屏風』を模作した作品であるが、原図(
宗達の
風神雷神図屏風)と比べ風神・雷神の全体が収まるよう若干大きめの寸法で、やや装飾的に描かれているのが大きな特徴で、全体的には(おそらくは用意周到に時間をかけて)極めて忠実に原図を模しているものの、細部では光琳の解釈に基づいた独自性が示されている。中でも最も顕著な差異は、風神、雷神各々の視線にある。
宗達の『
風神雷神図屏風』では風神は眼球のほぼ中央に、雷神は(下界を見るように)右斜め下に黒眼が描かれていることに対し、光琳の『風神雷神図屏風』では互いの視線が交わるように、風神は眼球のほぼ真右に、雷神は眼球のほぼ真左に、若干小さく黒眼が描写されている。さらに
宗達の風神、雷神の姿は仏彫の様な(神々の姿に相応しい)殊勝な雰囲気や威厳に満ちているが、光琳の風神、雷神は原図と比べ、それぞれを擬人化させたかの如く、優しく温和な雰囲気が漂っているほか、弱まった陰影や尖形などの、多少様式化された装飾的な表現に光琳の独自性が示されている。また風神、雷神の乗る黒雲の描写にも明確な違いがみられ、
宗達同様たらし込み技法によって描かれる光琳の黒雲は、原図より乱層雲のような重々しい質量感に溢れている。なお光琳に多大な影響を受けた(幕末に活躍した)江戸琳派随一の絵師、
酒井抱一が本作(尾形光琳による『風神雷神図屏風』)の模作『
風神雷神図屏風』を残しているほか、かつては同氏が本作の裏面に『
夏秋草図屏風』を描いていたことが知られている(現在は保存上、分離されている)。
関連:
俵屋宗達筆 『風神雷神図屏風』
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酒井抱一筆 『風神雷神図屏風』
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酒井抱一筆 『夏秋草図屏風』