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エジプトへの逃避途上の休息
(Riposo nella fuga in Egitto) 1570-73年頃
133×110cm | 油彩・画布 | ヴァティカン宮美術館 絵画館 |
16世紀に活躍したイタリアの画家フェデリコ・バロッチの代表的な作品のひとつ『エジプトへの逃避途上の休息』。本作は画家の友人シモネット・アナスタージに贈る為に描かれた作品で、19世紀に行方不明となっているウルビーノ公グイドバルド・デラ・ローヴェレの為に制作された原作を基に制作された。本作の主題はユダヤの王ヘロデが神の子イエスの降誕を知り、ベツレヘムに生まれる新生児の全てを殺害するために放った兵士から逃れるため、エジプトへと逃避した聖母マリアと幼子イエス、マリアの夫の聖ヨセフを描いた≪エジプトへの逃避途上の休息≫で、バロッチが強く影響を受けたエミリア派の巨匠コレッジョの傑作『スープ皿の聖母』に直接的な着想を得ていると考えられている。本作の官能性に富んだ甘美な表現や大胆でダイナミックな構図展開、ヴェネツィア派から学んだ豊かで明瞭な色彩描写はフェデリコ・バロッチ様式の典型的な特徴であり、本作はそれらを最も明確に示す作例のひとつとして広く知られている。なお本作はペルージアのイエズス会聖堂からローマのクイリナーレ宮を経てヴァティカン宮美術館に所蔵されることになったほか、サント・ステファノ聖堂(ピオッピコ)に同主題の模写が確認されている。
関連:コレッジョ作『スープ皿の聖母』
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