■ |
聖母子と智天使(聖母子と奏楽天使) 1508-1510年頃
(Madonna col Banbino, due angeli e cherubini)
20×16cm | Oil on panel | フィレンツェ, ウフィツィ美術館 |
コレッジョ最初期に分類される20点あまりの作品のひとつ『聖母子と智天使(聖母子と奏楽天使)』。金色の光と雲に包まれる聖母子を中心に楽器を奏でる二天使が姿を現す構図を取っている本作は、ヴェネツィア派を思わせる光影の表現から、今世紀の初めまでティツィアーノの作品とされてきた。また本作は確かな典拠や資料を欠いているが、同時期に描かれたとされる一連の作品群との密接な関係性から、画家が18歳〜20歳の頃に描いたものとされ、マンテーニャやジョルジョーネの影響を受けていたコレッジョ初期の作風がよく示されている。イエスを静かに見つめた母性を感じさせる聖母マリアの表現も特筆すべき点であるが、聖母の胸の上で結ばれるヴェールの薄く透明で繊細な質感と、さらにその上から覆われる濃紺のマントの対比的な表現が見事である。また画面右部分で楽器を奏でる智天使は、神学者たちによって分けられた天使九階級の中で、第二階級(上級三隊)の位置に在し、ヘブライ語源では「知識」や「仲裁する者」を意味する智天使(ケルビム)。また旧約聖書の創世記にはエデンの園の東の入り口を、炎の剣を持ち守るとされ、神の姿を見ることができる存在とされる。
|