Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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ジョルジョーネ Giorgione
1477-1510 | イタリア | 盛期ルネサンス ヴェネツィア派




16世紀に活躍したヴェネツィア派の巨匠で、初期ルネサンス様式から逸脱し、盛期ルネサンス様式を確立した人物。主題や物語を伝えられるよう(記されるよう)ありのまま表現するよりも、その主題に潜む人物の内面や心象の表現、また風景の情緒的な描写に秀で、繊細かつ豊潤な色彩表現と共にジョルジョーネの表現様式はヴェネツィア派の画家を始め、後に活躍する画家たちに大きな影響を与えた。ジョルジョーネは若くしてこの世を去っている為、画家の生涯については、同画派の確立者ジョヴァンニ・ベッリーニの工房で学んでいたなど、ヴァザーリの伝記以外にはほとんど知られておらず、作品数も少ないが、『眠れるヴィーナス』など未完に終わった作品は、共にジョヴァンニ・ベッリーニの工房で学んだ盛期ルネサンス期ヴェネツィア派最大の巨人ティツィアーノなど後世の画家が完成さたとされている。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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羊飼いの礼拝(アレンデールの降誕)

 1500-1505年頃
(Adirazione dei pastori (Nativita Allendale)) | 89×111.5cm
油彩・画布 | ワシントン・ナショナル・ギャラリー

ジョルジョーネの有名な宗教画『羊飼いの礼拝』。別名アレンデールの降誕と云い、主題は大天使からのお告げを受け、キリストの生誕したエルサレムの南に位置する町ベツレヘムへ向かい、同地で聖母と幼子キリストを発見した場面を描く≪羊飼いの礼拝≫。また本作はオーストリアのウィーン美術史美術館にレプリカが存在する。ジョルジョーネは聖母マリアの慈愛に満ちた微笑みを、情景豊かな美しい風景の中に描くことによって、人物の感情を表現した。また幼子キリストは聖母マリアに抱かれる姿ではなく、大地の上にキリスト単体で描かれていることから、キリストの神聖性を表現したとされている。ベツレヘムの大地に身を寄せる聖母マリアと幼子キリストを発見し、跪いて尊譲と祝福の意を表す羊飼いたちはその後、羊飼いたちは神を崇め、賛美する歌を歌いながら帰路についたとされている。

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ユディト

 (Giuditta) 1500-1505年頃
144×66.5cm | 油彩・板 (画布) | エルミタージュ美術館

第二正典に記されるユディト記(ユディト書)の主人公ユディトを題材に描いたジョルジョーネの名作『ユディト』。第二正典とはカトリックや東方正教会などで正典とされるが、一部を除いたプロテスタントでは正典に組み込まれていない書物を指し、旧約続編、旧約外典とも呼ばれているもので、本作の題材であるユディト記もそこに加えられているが、現在は研究が進み架空の物語であると考えられている。ユディト記とはベツリアという架空の街に住む女性ユディトの深い信仰心を描いた物語で、内容は、美しく裕福な未亡人ユディトの住むベツリアへ、アッシリア王ネブカドネツァルの命により、将軍ホロフェルネスが軍を率いて侵攻するも、ユディトが将軍ホロフェルネスの気を惹かせる為に近づき、酒宴に招かれたその夜、酔いつぶれた将軍の首を切り落とし、街を救うというものである。本作では信仰心の深いユディトは、悪を示す将軍ホロフェルネスの首を踏み、右手には勇敢にもその首を切り落とした剣が握られている。長い年月によりジョルジョーネの大きな特徴である色彩の豊かさは褪せているものの、均整のとれた構図や人物描写など、見所は多い。またユディトが踏んでいる切り落としたホロフェルネスの顔はジョルジョーネ本人の自画像とも言われている。

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玉座の聖母子と聖リベラーレ、聖フランチェスコ

 1505年頃
カステルフランコ祭壇画 -Pala di Castelfranco-)
(Madonna in trono col Bambino, fra i santi Liberale e Francesco)
200×152cm | 油彩・板 | Duomo, Castelfranco Veneto

ジョルジョーネが制作した祭壇画の代表作『玉座の聖母子と聖リベラーレ、聖フランチェスコ』。カステルフランコ・ヴェネト・サン・リベラーレ聖堂に置かれていることから『カステルフランコ祭壇画』として知られている。主題は祭壇画の典型であった玉座の聖母子に聖人を配した≪聖会話≫で、本作では聖堂の名称ともなっている同地の守護聖人リベラーレと、イタリアはアッシジ生まれの聖人フランチェスコが描かれた。本作ではかなり高い位置に聖母子の姿が描かれており、聖母子、特にキリストの神秘性、神聖性を強調するためだと考えられている。またカステルフランコ・ヴェネト・サン・リベラーレ聖堂を守護する聖人リベラーレは守護する者として、魔を退ける力を持つ銀の甲冑を身に着け、左腕には正旗を掲げている。晩年にはキリストと同様に聖痕を受けたと云われている聖フランチェスコは、アッシジの裕福な商人の家に生を受け、若き頃の放縦な日々を猛省し、清貧・童貞・服従を旨とする修行と伝道の生活を送り続け、後にフランシスコ会の創始者となった聖人である。

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嵐(テンペスタ)

 (Tempesta) 1505-1507年頃
82×73cm | 油彩・画布 | アカデミア美術館(ヴェネツィア)

ジョルジョーネ最大の代表作にして、西洋絵画史上最も主題の議論がなされている作品のひとつ『嵐』。本作は『嵐』と呼称しているが、題名はヴェネツィアの貴族ガブリエーレ・ヴェンドラミン邸で発見時に記録されていた『嵐とジプシー女と兵士を描いた風景』から由来している。主題については、古代神話説(パリスと羊飼いの妻、ユピテルとイオなど)、旧約聖書説(モーセの発見、アダムとエヴァなど)、聖人説(聖テオドロス)、文学説(ポリフィロの夢)、寓意画説(慈愛)など20以上の説が唱えられているが、どれも確証を得るには至っていない。一例をあげると、この母子像の解釈だけで、羊飼いの妻、イオ(ギリシャ神話に登場するゼウスの妃ヘラの女神官。)、エヴァ(最初の人間アダムの妻)、娼婦などの解釈が挙げられている。また近年行われたX線撮影での検査の結果、当初は画面中左図の場所には水浴する二人の女性が描かれていたことが判明し、本作の解釈をより難解にさせることとなった。

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風景の中にいる三人の哲学者

 (Tre filosofi)1505-1507年頃
123.5×144.5cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館

ヴェネツィア派の巨匠、ジョルジョーネの代表的な作品のひとつである『風景の中にいる三人の哲学者』。ヴェネツィア貴族タッデオ・コンタリーニ邸が旧蔵していたとされる本作は、未完の作品を、セバスティアーノ・デル・ピオン(当時の画家)が完成させたとされている。また本作の主題は、【1】東方三博士(マギ)を描いたとされる説。【2】青年から成人、そして老人へと至る人生の寓意を描いたとされる説。【3】諸哲学における流派の寓意を描いたとされる説など、さまざまな解釈が出ているが、そのどれも確証は得ていない。本作の美しい夕暮れの風景(又は日の出風景)でも示されているよう、ジョルジョーネは宗教画、神話画などのほか、卓越した技術で対象を見事に捉える人物画や肖像画、風景画などでも名を残している。

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眠れるヴィーナス

 (Venere dormiente) 1510-1511年頃
108.5×175cm | 油彩・画布 | ドレスデン国立絵画館

ジョルジョーネが手がけた代表的な神話画『眠れるヴィーナス』。ヴェネツィア貴族ジェロラモ・マルチェロ邸が旧蔵していたとされる本作だが、発見時は未完の作品であったが、後に美の基本像として賞賛される『ウルビーノのヴィーナス』を制作したティツィアーノが、背景と、後世に塗りつぶされ今は見ることのできないキューピッドの姿を描き完成させられたとされている。穏やかな表情で眠りにつくヴィーナスは金星を意味し、愛と美の女神として知られるヴォーナスだが、この≪ヴィーナス≫の名称はローマ神話に基づくもので、ギリシャ神話ではアフロディーテとして名が知られている。ヴェネツィア派の特徴でもある、この柔らかい曲線と色彩で描かれたヴィーナスの裸体表現方法は、新古典主義最後のアングルカバネルなど画家を始め、後世の画家らの裸婦像表現に決定的な影響を与えることになった。

関連:ティツィアーノ作『ウルビーノのヴィーナス』

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