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授乳の聖母 (Madonna del latte) 1524-1526年頃
8.5×57cm | Oil on panel | ブダペスト国立美術館 |
聖母マリアが幼きイエスに授乳をおこなう場面を描いた、あまりみられない構図である本作『授乳の聖母』。ラファエロの聖母子画を彷彿とさせる、穏やかで愛情に満ちた聖母の表情や仕草によって母性の気高さを存分に感じさせる本作は、構図こそ暗い背景に人物を浮かび上がらせるレオナルド・ダ・ヴィンチ的なアプローチで描かれているが、そこに表現されたのは授乳という極めて生物的な題材が描かれている。これは厳粛で精神的なつながりを重要視していた、ルネサンス期までの古典的な聖母子像の発想から、より人間味に溢れる、自然的な母と子供を主題に聖母子像を描く発想への移行を示している。特に幼いイエスが天使の持つ果物籠に手を伸ばす仕草は、後の救世主としての神々しさより、純真な子供らしさを感じさせ、作品をより愛情豊かなものとしている。
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