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アルピエの聖母 (Madonna delle arpie) 1517年
207×178cm | 油彩・板 | ウフィツィ美術館(フィレンツェ) |
アンドレア・デル・サルトの代表作であり、画家随一の傑作でもある『アルピエの聖母』。フィレンツェのサン・フランチェスコ・デ・マッチ聖堂の主祭壇画として制作された本作は、2天使に支えられる聖母子を中心に、左に聖フランチェスコ、右に福音書記者聖ヨハネを配した≪聖会話≫を主題とし、18世紀初頭メディチ家の所蔵を経て、ウフィツィ美術館へ収蔵された経緯を持つ。アンドレア・デル・サルトの画風である古典的表現の中に、スフマート(ぼかし技法)によるレオナルド・ダ・ヴィンチの大気感、ミケランジェロによる厳格な雄大感、ラファエロによる聖母子像の甘美な表現と、ルネサンスのエッセンスを凝縮した本作は、まさにアンドレア・デル・サルト作品を代表する高い完成度を見せる。聖母子を中心に取られる、安定した三角形の構図は聖母子像の典型とされ、アンドレア・デル・サルトの描く殆どの聖母子像は、この構図が取られている。また聖母マリアのモデルは画家の妻とされている。本作題名の由来ともなった、怪物(ハルピュイア=アルピエ)が彫られる台座が聖母子の足元に配されている。画面左右に配される聖フランチェスコ、福音書記者聖ヨハネの表現は、豊かな人体表現を用いながらも、聖人としての神性も兼ね備えている。
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