Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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ジョゼフ=マリー・ヴィアン Joseph-Marie Vien
1716-1809 | フランス | 新古典主義




フランス新古典主義萌芽期における重要な画家であり同主義の創始的存在のひとり。均整的かつ明快な画面展開を用いた古代趣味的な作品を制作し人気を博す。特に高いデッサン力に基づいた洗練された形状描写や古典への傾倒は画家の代表作『プットーを売る女(クピドの行商人)』と共に18世紀後期フランス美術界の方向性を決定付けた。1716年モンペリエに生まれ幼少期から青年期にかけて肖像画家ルグラン、建築家ジャック・ジラル、陶工家ジャン・フォルティエなどに学び芸術的素養を身に着ける。1740年からパリへと赴き盛期ロロコ美術を代表するシャルル=ジョゼフ・ナトワールに師事、ロココ的な作風から本格的に絵画の修行に入る。1743年ローマ賞大賞を受賞し翌1744年から1750年までイタリアのローマに滞在し、同地で古典趣味への傾倒を示し始める。1750年からはパリへと戻り、1754年には王立絵画・彫刻アカデミーに入会。以後、古代美術収集家ケリュスなど有力者の庇護を受けながら古典主義的作品を数多く手がけ、その後フランスでおこる古代ギリシア趣味の先駆的存在として見做されるようになる。1775年、王立絵画・彫刻アカデミー会長に就任、そして1808年にはレジオン・ドヌール勲章を授かるものの、翌1809年にパリで死去。ヴィアンは新古典主義の優れた指導者としても知られており、画家の指導を受けた者の中には同主義最大の巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドの名が含まれる。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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プットーを売る女(クピドの行商人)


(Marchande d'amours) 1763年 | 98×122cm
油彩・画布 | フォンテーヌブロー宮国立美術館

18世紀フランスの画家ジョゼフ=マリー・ヴィアンの代表作であり新古典主義的絵画の最も重要な作品のひとつ『プットーを売る女(クピドの行商人)』。画家が1763年に制作し、同年のサロン出品時には批評家たちから多くの称賛の声を受けたことが伝わっている本作は、古代ローマ期にナポリ近郊グラニャーノの遺跡から発掘された壁画を版画家ノリーが写した銅版画に基づいて制作された作品で、高貴な女性へ行商人がローマ神話における愛の神アモル(英語名ではキューピッド。ギリシア神話上のエロスと同一視される)を売る場面が内容として描かれている。画面左側には羽をつまみながら籠からクピドを取り出し、高貴な婦人の前へ差し出す行商人が配され、画面中央のガラスの花瓶や煙が立ち昇る香炉を経由して、画面右側には取り出されたクピドへ興味深く視線を送る上品で裕福そうな身なりの女性と、付き人の女が描き込まれている。登場人物が身に着ける衣服は全て当時の考古学に基づいた古代的衣服であり、また背景に示される支柱などの建築様式も古代建築の模写であることが認められる(ただし家具などはルイ16世様式で描かれるなど一部には折衷的な展開が示されている)。構図的にはグラニャーノ遺跡の壁画を左右反転させそのまま流用しており、垂直と水平が強調された極めて安定的で厳格な場面展開であるものの、作品からは簡素的で軽妙な雰囲気や表現も感じることができ、それらの特徴を併せ持つ本作は、新古典主義の萌芽的存在、そして最も早い新古典主義の傾向が示される作例のひとつとして今も重要視されている。

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【全体図】
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Work figure (作品図)


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