Introduction of an artist(アーティスト紹介)
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カルロ・クリヴェッリ Carlo Crivelli
1430-1495 | イタリア | 初期ルネサンス・ヴェネツィア派




15世紀のヴェネツィアにおいて最も特異で独創的な存在の画家。当時最新の絵画理論であった遠近法やパトヴァ派・フェラーラ派に通ずる金属的で硬質な線描を用い、過剰にすら感じられる華やかで豪壮な装飾によって古典芸術を表現した。ヴェネツィア出身のカルロ・クリヴェッリは修行時代をヴィヴァリーニ一族の工房で過ごしパトヴァに移った後、おそらくは同地の大画家マンテーニャの影響を受けるも、私生活では人妻を誘拐して有罪となる。各地を放浪し1459年イストニア(旧ユーゴスラヴィア)のタザールに滞在、1468年から生涯を終えるまでマルケ地方で画業を営む。同地で画家の特異な才能が開花し、極めて悲観的で個性的な多翼祭壇画を多数制作し「多翼祭壇画の詩人」と呼ばれた。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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マグダラのマリア

 (Maria Maddalena) 1477年頃
152×49cm | テンペラ・板 | アムステルダム国立美術館

15世紀ヴェネツィア派において、類稀な存在感を示す画家カルロ・クリヴェッリ中期の代表作『マグダラのマリア』。現在のところ詳細は不明であるが、おそらくは祭壇画を構成するパネルのひとつとして描かれた作品であると推測される本作は、主イエスの御足に香油を塗り自らの髪の毛でそれを拭ったとされる聖女で、姉マルタと共に主イエスが起こした弟ラザロの蘇生の奇蹟を目撃したマリアや、娼婦に身を堕とし石打の刑に処されるところを「あなた方の中で罪の無き者が最初に石を投げよ」とイエスの言葉によって救われた娼婦マリア、悪霊に憑かれた病を主イエスによって癒された「マグダラの女」などと混同される、≪マグダラのマリア≫の単身像である。本作の華やかで豪壮な装飾や、流麗で黄金色を多用した衣服・頭髪のほか、マグダラのマリアの聖女としての聖性や気高さを感じられる鋭謐的な表情の描写などに後期ゴシック的な特徴を示す古典技法を用いながら、カルロ・クリヴェッリの特徴である金属的で硬質な線描によって他の画家の作品からは見られない画家独特の表現が随所に示されている。磔刑に処さ死した神の子イエスを見守り、埋葬に付き添うほか、その三日後に主イエスの復活を目撃した最初の人物である逸話でも知られる≪マグダラのマリア≫は1969年まで「罪深い女」の象徴として扱われるも、同年開かれた世界五大陸から聖職者が集まった初の公会議「第2ヴァティカン公会議」を受け、カトリック教会がマグダラのマリアの聖性と地位や混同される逸話の見直しが始まったほか、異説ではあるが一部からは主イエスと結婚し娘サラを授かったとする説も唱えられている。

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受胎告知

 (Annunciazione) 1486年
207×146cm | テンペラ・板 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

ヴェネツィア派において特異な存在であった画家カルロ・クリヴェッリの最もよく知られる代表作『受胎告知』。本作の主題は聖母マリアが大天使ガブリエルより聖胎を宣告されるキリスト教で最も良く描かれた教義のひとつ≪受胎告知≫で、受胎告知の祝日であった1482年3月25日に教皇シクストゥス4世がアスコリ・プチェーノ市に与えられた自治権を記念し、同市のアヌンツィアータ聖堂の祭壇画として制作された。当時最新の絵画理論であった遠近法を大胆に起用し金属的で硬質な線描による狭い空間の中に配された、祈祷台で祈る聖母マリア、父なる神の意志を示す白い鳥に姿を変えた聖霊、聖胎を告げる大天使ガブリエル、大天使ガブリエルの隣でアスコリ・プチェーノ市の模型を持つ同市の守護聖人聖エミグディウスなどの登場人物に、カルロ・クリヴェッリの非常に個性的な特徴が良く示されている。

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ろうそくの聖母(玉座の聖母子)

 1492年頃
(Madonna della candeletta (Madonna col Bambino in trono))
218×75cm | テンペラ・板 | ブレラ美術館(ミラノ)

15世紀ヴェネツィア出身の画家の中において、類稀な存在感を示すカルロ・クリヴェッリ晩年を代表する傑作『ろうそくの聖母』。クリヴェッリの晩年(1492年頃)に、カメリーノ大聖堂多翼祭壇画の主画面部分として手がけられた本作に描かれるのは、豪壮で華麗な玉座に鎮座する聖母マリアと、その腕に抱かれる幼子イエスの典型的な≪玉座の聖母子≫の図像である。カメリーノ大聖堂多翼祭壇画は、主部分の本作に左画面部分へ『聖ペテロと聖パウロ』(左半分破損)が、右画面部分に『聖ヒエロニムスと聖アウグスティヌス』が配されるほか、12枚のプレデッラ部分と、チマーザ部分『キリストの磔刑』から構成された祭壇画で、18世紀に起こった地震の為にサン・ドメニコ聖堂へ移された後、各地へと分散した。各部分ともカルロ・クリヴェッリらしい豪華な装飾と金属的で硬質な線描の表現が示されるが、中でも幼子イエスが手にする蝋燭から名前が由来する本作『ろうそくの聖母』の深い悲観性に溢れた聖母マリアの静謐ながら複雑さを感じさせる表情や、各部分に高い写実性と画家独自の過剰とも捉えることのできる豪華な表現から、カルロ・クリヴェッリ晩年期の傑作として広く知られている。

関連:左画面部分『聖ペテロと聖パウロ』
関連:右画面部分『聖ヒエロニムスと聖アウグスティヌス』
関連:チマーザ部分『キリストの磔刑』

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