Description of a work (作品の解説)
2007/05/01掲載
Work figure (作品図)
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ディアナとカリスト

(Diana e Callisto) 1556-1559年頃
187×205cm | 油彩・画布 | スコットランド王立美術館
※スペイン国王フェリペ2世のためのポエジア作品

スペイン国王フェリペ2世の注文により、10年以上にわたり断続的に描かれ続けた神話画連作ポエジアより『ディアナとカリスト』。フェリペ2世のために制作された本作は、女性様式一連の神話、主に古代ローマの詩人オウィディウスの詩をもとに、感覚的な神話の翻訳画として対画『ディアナとアクタイオン』と共に描かれた作品の中の一枚で、ティツィアーノの様式がさらに変化を示す好例のひとつである。若年期の頃の几帳面ともいえる細部まで緻密な技巧的作風は影を潜め、マッキエと呼ばれる荒々しく大まかな斑点技法へと変化している。これは画家の師ジョルジョーネからの完全なる決別を意味ており、さらに再三の塗り直しと加筆の施しにより、(近くで眺めると見分けにくいが)遠くから見ると、その全貌が明らかになるという複雑な特徴を持つようになる。本作に描かれる主題≪ディアナとカリスト≫とは、主神ユピテルの娘で太陽神アポロの双子の妹でもある、純潔の女神≪ディアナ≫へ、処女の誓いを立て従者として従っていたニンフ≪カリスト≫が、ユピテルに見初められ子を宿し、狩りの最中の沐浴の際に妊娠が発覚してしまったことから、激昂したディアナがカリストを熊に変える(諸説あり、ユピテルの妻ユノの怒りを恐れユピテルがカリストを熊に変えた、又はユノ自身が変えたともされる)神話で、オウィディウスの詩を深く理解していた教養高い画家であるからこそ、行間に隠された光彩や荘重さが、自身の芸術性や技巧と相成って鮮やかに画面へ反映されているのである。なおティツィアーノを研究していたバロック絵画の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスが本作の模写を残している。

関連:対画 『ディアナとアクタイオン』
関連:ルーベンスによる模写作品 『ディアナとカリスト』


【全体図】
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誓いを破ったカリストに憤りをあらわにするディアナ。本作はフェリペ2世のために制作された本作は、女性様式一連の神話、主に古代ローマの詩人オウィディウスの詩をもとに、感覚的な神話の翻訳画として対画『ディアナとアクタイオン』と共に描かれた作品の中の一枚で、ティツィアーノの様式がさらに変化を示す好例のひとつである。



【憤りをあらわにするディアナ】
他のニンフらに服を脱がされるカリスト。若年期の頃の几帳面ともいえる細部まで緻密な技巧的作風は影を潜め、マッキエと呼ばれる荒々しく大まかな斑点技法へと変化している。これは画家の師ジョルジョーネからの完全なる決別を意味ており、さらに再三の塗り直しと加筆の施しにより、遠くから見ると、その全貌が明らかになるという複雑な特徴を持つようになっている。



【他のニンフらに服を脱がされるカリスト】
水が流れる彫像。本作に描かれる主題≪ディアナとカリスト≫において、カリストはディアナに許しを請うべきであるが、本作ではカリストは彫像を見上げており、自分と後に生まれる子供との間の悲劇的運命を感じているとも解釈されている。



【水が流れる彫像】

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