Description of a work (作品の解説)
2006/07/05掲載
Work figure (作品図)
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ヴィーナスとオルガン奏者とキューピッド


(Venere con organista e amorino) 1548年又は1555年頃
149×217cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

ティツィアーノ制作によるヴィーナスを主題とした代表的な作品のひとつ『ヴィーナスとオルガン奏者とキューピッド』。伝統的にアウクスブルグでスペイン国王カール5世のために手がけられたとされる本作に描かれるのは、巨匠ジョルジョーネの傑作『眠れるヴィーナス』から始まり、本作同様ティツィアーノ随一の代表作『ウルビーノのヴィーナス』に続いた、所謂≪横たわる天上のヴィーナス像≫を主題とした作品の一例であるが、その解釈には様々な説が唱えられている。純粋に官能を追求した快楽的作品であると解釈する研究者も少なくないものの、その一方では新プラトン主義に基づく高度な寓意が示されるとの説を唱える研究者も多く、その説によればカール5世と解釈される音楽を奏でるオルガン奏者は、愛の神キューピッドを見つめる美の女神ヴィーナスとの間の絆を感じつつ、決して交わることなくプラトニックな関係を保っている。これは当時の人文学書『愛の本質の書』中「崇高なる天上の愛はプラトニックであり音楽によって愛撫される」に基づいていると考えられてる。また背景の抱擁し合う男女や牡鹿、牝鹿、孔雀などは至高の美と高ぶる愛と性を表現しているとされ、世俗と天上の愛の本質の差異と、そこに起こる葛藤をティツィアーノの類稀な表現によって画面内に示したと考えられる。なおベルリン美術館やメトロポリタン美術館などに『ヴィーナスとオルガン奏者(又はリュート奏者)』のヴァリアントが所蔵される他、本作の少し後に描かれた同系の作品『音楽にくつろぐヴィーナス』が同プラド美術館に所蔵されている。

関連:プラド美術館所蔵『音楽にくつろぐヴィーナス』


【全体図】
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愛の神キューピッドを見つめる美の女神ヴィーナス。本作は伝統的にアウクスブルグでスペイン国王カール5世のために手がけられたとされるも、グランベラ枢機卿に贈られたとする説など他の説も唱えられている。



【キューピッドを見つめるヴィーナス】
オルガンを奏でつつヴィーナスを見つめる奏者。カール5世と解釈される音楽を奏でるオルガン奏者は、愛の神キューピッドを見つめる美の女神ヴィーナスとの間の絆を感じつつ、決して交わることなくプラトニックな関係を保っており、当時の人文学書『愛の本質の書』中「崇高なる天上の愛はプラトニックであり音楽によって愛撫される」に基づいていると考えられてる。



【ヴィーナスを見つめる奏者】
オルガン奏者の頭上に描かれた抱擁し合う男女や牡鹿。ベルリン美術館やメトロポリタン美術館などに『ヴィーナスとオルガン奏者(又はリュート奏者)』のヴァリアントが所蔵される他、本作の少し後に描かれた同系の作品『音楽にくつろぐヴィーナス』が同プラド美術館に所蔵されている。



【抱擁し合う男女や牡鹿】

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