Introduction of an artist(アーティスト紹介)
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ベルナルド・ベロット Bernardo Bellotto
1721-1780 | イタリア | 18世紀景観画家




18世紀ヴェネツィアを代表する景観画家。緻密で精緻な写実的描写と、透明感を感じさせる清潔な光の表現、そして17世紀絵画黄金期のオランダ絵画を思わせる天候の叙情性漂う大気性の表現に秀で、それらを融合させた独特の景観様式を確立。詩情性に溢れたベロットの風景表現は、故郷ヴェネツィアを始めとしたイタリア国内はもとより、ドレスデン、オーストリア、ミュンヘン、ワルシャワなど特に中央欧州の権力者たちから高い支持を集めた。1721年、ヴェネツィアに生まれ、伯父である大画家カナレット(ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)に弟子入りし同氏から絵画を学ぶ。1738年には画家組合へ加入、1741年から良く1742年にかけてカナレットの助手としてヴェネト地方を旅行し、その後、1746年までは単独でローマ、フィレンツェ、ミラノ、トリノ、ヴェローナなど大都市を巡りながら絵画制作をおこなう。1747年夏頃、ザクセン選帝侯アウグスト三世の招きでドレスデンへ赴き、10年間ほど滞在(第一次ドレスデン滞在期)。1758年、オーストリア大公(ハプスブルク家君主)である女帝マリア・テレジアの誘いを受けウィーンへ旅立ち、次いでミュンヘンへと向かった。晩年期は再度ドレスデンを訪れた後、ロシアの宮廷画家となるため同地へ向かったものの、1767年には当時のポーランド国王スタニスワフ・ポニャトフスキのためにワルシャワに定住して絵画制作をおこなった。1780年、ワルシャワで死去。なおベルナルド・ベロットは諸外国滞在中カナレットの署名にて作品を多々制作していることが判明しているほか、晩年期には当時急速に台頭していた新古典主義の影響を感じさせる作品を残している。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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ガッザーダの風景

 (Veduta della Gazzada) 1744年
65×100cm | 油彩・画布 | ブレラ美術館(ミラノ)

18世紀イタリアを代表する景観画家ベルナルド・ベロット初期の最も重要な作品のひとつ『ガッザーダの風景』。本作は画家が23歳頃にロンバルディア州を旅していた時に、バレーゼ近郊の小村≪ガッザーダ≫の情景を描いた風景画作品で、偉大なる師カナレットの影響からの逸脱と独自の様式確立が示される作品としてベルナルド・ベロットの作品の中でも特に重要視されている。画面上下のほぼ中央を境界に、下部へは前景として穏やか小村の光景と素朴な村人の活き活きとした生活が繊細で緻密な筆触によって丹念に描き込まれている。画面上部へは中景〜遠景として林と小丘、そして青々とした山脈と広大に広がる空が配されており、ロンバルディア地方独特の大気感や、初秋を感じさせる季節的な秋風が大雲を流す様子などが見事な出来栄えを示している。本作で最も注目すべき点は、叔父でもあった師カナレットの様式とは明らかに一線を画す透明感に溢れた光の表現や空気感、画面全体から醸し出される詩情性にある。明瞭な陰影と緻密な描写によって際立つ家屋とその屋根の薄板ひとつひとつは陽光によって、あたかも光の粒として輝くかのように浮かび上がり、その奥の薄靄がかかる湿潤的な森林との対比は観る者の目を強く惹きつける。さらに夏の終わりを感じさせる秋風が大雲を流し散らす様子には、微かな感傷性を見出すことができる。このような観る者を圧倒する写実的描写の中に抒情的印象をも取り入れた風景描写は画家独自の様式の大きな特徴であり、本作にはベルナルド・ベロットの景観画家としての才覚の萌芽が明確に示されているのである。

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ベルヴェデーレ宮から望むウィーンの情景


(Vienna dal Belvedere) 1758-60年頃
136×214cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館

18世紀の景観画家ベルナルド・ベロット、ウィーン滞在期の代表作『ベルヴェデーレ宮から望むウィーンの情景』。本作はハプスブルク家君主であった女帝マリア・テレジアの招きによりオーストリアのウィーンで制作活動をおこなっていた頃に制作された作品で、女帝マリア・テレジアから直接依頼されたウィーンの景観画である。本作に描かれる風景はオーストリアを代表するバロック様式の宮殿≪ベルヴェデーレ宮(※現在はオーストリア絵画館として運営されている)≫から眺めた同都市の景観であるが、やや冗長的である実際の風景と比較してみると、風景全体が凝縮されたかのように引き締められ、調和性と美的印象が大幅に改善されるなど、画家が大規模な理想化を図っていることが認められる。画面前景にはベルヴェデーレ宮殿の庭園が奥行きを強く感じさせる遠近法によって描写されており、中景には陽光によって美しく輝くウィーンの街並みが広がっている。さらに遠景として小高い山々や、観る者に詩情性を抱かせる雄弁で印象的な灰雲が風に流される様子が描写されている。本作の観る者を強く惹きつける非常に精緻で圧倒的な写実的描写は、ベルナルド・ベロットより先に諸外国に名を轟かせていた師カナレットの作品と比較しても遜色のない出来栄えを示しており、その依頼主や意図は不明な点は多いものの、事実として本作にはベルナルド・ベロットの手によってカナレットの名が署名されている。

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東側から見るクロイツ聖堂の残骸(ドレスデンの十字架教会の廃墟)


(Resti dekka Kreuzkirche da est) 1765年
80×110cm | 油彩・画布 | ドレスデン国立絵画館

18世紀の風景画家の中でも傑出した存在のひとりであるベルナルド・ベロット随一の代表作『東側から見るクロイツ聖堂の残骸(ドレスデンの十字架教会の廃墟)』。本作はベルナルド・ベロットにとって二度目の滞在となったドレスデンのゴシック様式によるシンボル的な教会≪聖十字架教会(クロイツ聖堂)≫を再建するために解体(取り壊し)している現場を描いた作品である。本作の画題≪聖十字架教会(クロイツ聖堂)≫は1760年にプロイセン軍の進攻爆撃によって、教会として機能しなくなるほど破壊されてしまった為に、再建する必要があった(※なお同教会は後にロココ様式で再建された)。本作に描かれる再建のための教会解体の情景は、当時の様子をありありと伝えるだけでなく、破壊と再生という詩情性や、ドレスデンで暮らす人々の逞しい生命力すら見出すことができる。画面中央やや左側に爆撃され無残に破壊され廃墟と化した聖十字架教会が配され、教会の前には解体処理で発生した教会の残骸が山積みされている。前景となる画面下部には解体作業に従事する人々や、何やら打ち合わせをする紳士ら、解体作業を眺める(高い身分を思わせる)身なりの良いの者たちなどが描かれており、当時の様子をうかがい知ることができる。さらに画面右側には大勢の人々が堅牢な建物の前に緻密な筆触で丹念に描き込まれており、細部に至る部分までベルナルド・ベロットの技量の高さを感じることができる。また正確ながら観る者への印象も計算された構図展開や構成要素の配置、絶妙な空間処理、詩情性を感じさせる曇り空の微妙な光彩表現なども本作の大きな見所のひとつである。

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