■
寝台で犬にダンスをさせる若い娘
(ベッドで犬と遊ぶ若い娘、犬と戯れる女)
1768-70年頃
(Jeune fille faisant danser son chien sur son lit)
89×70cm | 油彩・画布 | アルテ・ピナコテーク
ロココ美術の巨匠ジャン・オノレ・フラゴナールが手がけた風俗画の代表的作例のひとつ『寝台で犬にダンスをさせる若い娘(ベッドで犬と遊ぶ若い娘、犬と戯れる女)』。本作は依頼者(又はその進呈者)の寝室に飾る閨房図として制作された作品で、寝台(ベッド)の上で小犬と戯れる少女のような若い女性の姿が描かれている。閨房図は
ティツィアーノの傑作『
ウルビーノのヴィーナス』を始め(※同作の解釈は諸説唱えられている)古くから、その目的や意図により官能性豊かに描かれてきたが、本作で表現されるあまりにも直接的な官能性は当時から衝撃的であり、あまりの卑猥さから本作は勿論、本作を元にした版画でさえも一般で公開することは許されなかったと伝えられている。画面中央から下部分に本作の画題である犬と戯れる若い娘が描かれているが、注目すべきは彼女らを捉えるその視点である。左半身を主体として若い女の全身像が捕らえられているが、真横よりやや下半身寄りに視点が据えられている。この為、下着を身に着けない若い女の下腹部、そして犬の尻尾で絶妙に隠れているものの性器部分が、観る者へと露わになっている。また若い女の両足で犬を挟み込むように抱き上げる姿態は、否が応にも性行為(正常位)の姿態を連想させ、紅潮しながら屈託の無い笑顔(喜びの感情)を浮かべる彼女の表情と共にエロティックな私生活の様子を暗喩している。本作は絵画作品としての非常に高い完成度を示しており、フラゴナールが得意とした(師である
フランソワ・ブーシェとは一線を画す)黄色の色彩を寝台の周りを囲む布の色に用いて画面全体を覆い、その中心に描く対象である若い女と犬、そして寝台を敷かれるシーツを白色を主体として描き込むことによって、画面の中に(本作の内容と良く合う)軽快・軽薄な明るさや輝きを生み出すことに成功している。