Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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フランチェスコ・グアルディ Francesco Guardi
1712-1793 | イタリア | 18世紀景観画家




18世紀イタリアを代表するヴェネツィアの景観画家。生涯をヴェネツィアで過ごし、同地で制作活動をおこなうが、1760年代から夢想的で叙情性に富んだ即興性の高い独自の都市景観表現を確立。それまでに無い詩情感の漂う印象的で近代的な作風は、当時のみならず現在も極めて高い評価を得ている。景観画、奇想画、祝祭画を主な画題としているものの、画業の初期には兄の影響で宗教画も手がけている。画家の作品の制作年代は不明なものが多く、その大半が後年に描かれたものであるとしか判明していない。1712年、高名な画家一族ドメニコ・グアルディ家の次男として生まれ、同じく画家であったジョヴァンニ・アントニオから同家の工房で絵画を学ぶ(※兄も名高い画家であった)。また同時に先駆者カナレット、マリエスキ、北方絵画から多大な影響を受けつつ独自の描写技術を習得する。その後、ヴェネツィアで制作活動をおこなうものの、1761年に兄ジョヴァンニ・アントニオが死去すると作風が一変、先人カナレットとは決定的に異なる、即興的筆触による幻想的で詩情に満ちた表現の都市景観画を制作するようになった。この独自的な表現様式による作品は同地の者のみならず外国人旅行者たちに高い評価を受け、没落に向かいつつあったヴェネツィアにおいて最後の芸術的輝きとなった。1793年、同地で死去。なお18世紀イタリア最大の画家ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロは義兄にあたる。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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灰色のラグーナ(ラグーナのゴンドラ)


(Gondola sulla laguna) 1780年頃
25×38cm | 油彩・画布 | ポルディ・ペッツォーリ美術館

18世紀ヴェネツィアの都市景観画家フランチェスコ・グアルディ最大の代表作であり、18世紀景観画(ヴェドゥータ)における傑作中の傑作でもある『灰色のラグーナ(ラグーナのゴンドラ)』。本作はおそらくグアルディが晩年期に差し掛かった1780年頃に制作された、≪ラグーナ(潟湖)≫を行き来するゴンドラを画題とした作品である。画面手前にはラグーナを渡る漕ぎ手とゴンドラが、遠景には数台のゴンドラをヴェネツィアの都市景観が微かに描き込まれるという、他の画家による景観画(ヴェドゥータ)と比較すると非常に地味で簡素な構成ながら、画面全体から醸し出される悲哀的な抒情性と詩情感に溢れた幻想的雰囲気は18世紀におけるヴェドゥータの傑作として今なお観る者の目を惹きつける。これら独特の感受性は景観画(ヴェドゥータ)を確立した偉大なる画家カナレットの様式とは決定的に異なり、都市景観の地理的な正確性や再現性は除外される点も特筆に値するものである。さらに本作で注目すべき点は振るえを帯びた即興的な筆触による繊細な光の表現にある。画面全体が靄のような色彩の暈しに包まれた本作の、決して硬質的ではない柔和な光は水面へ微妙に反射し微妙な色調の変化を生み出している。また本作の抑えられた色数や光の特性に注目した独自的な表現には直接的な関わりは認められないものの、ロマン主義的傾向、さらには印象派にも通じる思想性や世界観を見出すことができる。なお本作は現在、ミラノのポルディ・ペッツォーリ美術館に所蔵されている。

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音楽愛好家クラブでの女性たちの演奏


(Concerto di dame al casino dei Filarmonici) 1782年
67×90cm | 油彩・画布 | アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)

18世紀ヴェネツィアを代表する景観画家フランチェスコ・グアルディ後期の傑作『音楽愛好家クラブでの女性たちの演奏』。本作は1872年に「北の伯爵」とも呼ばれていたロシア大公パーヴェル・ペトロヴィッチとその妻マリア・トドロヴナがヴェネツィアを訪問した時に、記念として制作された6点の連作の中の1点で、描かれる場面は同年1月20日に老行政長官らの主催によってスカラ・ディ・フィラルモニーチで開催された≪貴婦人のための音楽祭≫である。本作中で音楽を演奏しているのはピエタ女学院の孤児80名で構成される女性交響・合唱団で、かの有名なアントニオ・ヴィヴァルディが指揮に立つ他、フランスの著名な思想家ジャン=ジャック・ルソーも感嘆するなど、当時は欧州各地にまでその名声が轟いていた。本作では交響楽団は画面左側2階(演奏者席)に配され、中央へは優雅に舞踏をおこなう貴婦人たちが秩序的に描き込まれている。本作のこれら現実に忠実な場面描写も注目すべき点ではあるものの、特筆すべきは奏でられる音楽の響きと色彩との融合的表現にある。空気や光の震えを感じさせる独特の筆触によって画面全体は描写されており、その震えは交響楽団の奏でる美しい音楽の調べや響きまでも観る者へ感覚的に伝えることに成功している。さらに人物など各構成要素の明部の強いコントラストは画面の中で心地良い旋律(リズム)を奏でており、観る者に場面の雰囲気までもありありと感じさせる。そしてやや抑制的な全体の色彩構成がそれらを見事に調和させており、類稀な完成度を生み出している。

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Work figure (作品図)


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