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自画像
(Self-portrait) 1790年
100×81cm | 油彩・画布 | ウフェツィ美術館(フィレンツェ)
18世紀のロココ美術後期に活躍した女流画家エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン随一の代表作『自画像』。1789年に起こったフランス革命から逃れる為にイタリアへと旅立ったヴィジェ=ルブランが同地の大公の依頼により制作した本作は、画家と非常に親しい友人関係にあったフランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネットの肖像画を手がける自身の姿を描いた≪自画像≫作品である。画面中央やや右側にその美貌でも名を馳せたよう極めて美しく端整な顔立ちで描かれるヴィジェ=ルブランの表情は、ロココ様式による肖像画の典型であった軽い微笑みを浮かべており、観る者と柔らかく対峙している。そしてその姿態もあくまでも画家としての姿が全面に描きながら、非常に洗練された雰囲気を携えている。画面左側に配される画布には王妃マリー・アントワネットの顔が製作途中ながら表情が判別できるまで描き込まれており、画家と王妃の暑い友情を感じさせる。全体としては肖像画でも名声を博した17世紀を代表するフランドルの画家
アンソニー・ヴァン・ダイク風の古典的構図・構成ながら、生命力を感じさせる生き生きとした明瞭な色彩と、細部まで入念に描写された丁寧な筆触処理によって、ロココ独特の豊潤な香りと雰囲気を見事に表現しており、当時から多くの模写が残されるなど、当時のフランスを代表する画家が制作した肖像画(自画像)作品として類稀な賛美を受け、好評を博した。なおヴィジェ=ルブランは本作以外にも『
麦藁帽子を被った自画像』など、生涯で複数の自画像作品を制作したことが知られている。
関連:
1783年制作 『麦藁帽子を被った自画像』
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