2011/02/16掲載
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若き殉教者の娘(殉教した娘)1855年(La Jeune Martyre (Une martyre au temps de Dioclétien)) 170.5×148cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) 関連:ジョン・エヴァレット・ミレイ作『オフィーリア』
神秘的な光に包まれる殉教した娘。本作は、3世紀ディオクレティアヌス帝時代における≪無名の若き殉教者≫を主題とした宗教画作品で、それまで画家が手がけてきた物語性を容易に理解できる歴史画とは全く異なる≪宗教に対する無垢的な殉教性≫のみに焦点があてられている点は特に注目すべき点である。
【神秘的な光に包まれる殉教した娘】
腹部の上で十字に縛られる両腕。極めて写実的な描写を用いながら重厚な闇の中へ光の霊妙的な詩情性と殉教という象徴的概念のみを秀出させた表現には、ドラロッシュが最晩年に辿り着いたロマン主義的な新境地が示されている。
【腹部の上で十字に縛られる両腕】
暗闇の中のキリスト教徒。後景となる画面上部には娘の遺骸を発見する2名のキリスト教徒が描かれているが、闇に沈み込むような両者の描写には、画家の作品的特徴でもあった誇張的な場面の物語的演出に対する決別を見出すことができる。
【暗闇の中のキリスト教徒】 |