Description of a work (作品の解説)
2008/05/08掲載
Work figure (作品図)
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アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I


(Bildnis Adele Bloch-Bauer I) 1907-08年
138×138cm | 油彩・画布・金箔・銀箔 | 個人所蔵

ウィーン分離派最大の巨匠グスタフ・クリムトの類稀な代表作のひとつ『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』。本作に描かれるのは、裕福な銀行家フェルディナント・バウアーの妻であり、一部の研究者たちからは一時的に画家と愛人関係にあったとする説も唱えられている女性≪アデーレ・ブロッホ=バウアー(※彼女は画家が1901年に手がけた傑作『ユディト I』のモデルでもある)≫で、本作には自然主義的な写実表現と、金箔・銀箔を多用した豪奢で華麗な平面的装飾性を融合させた、クリムト独自の表現・様式美の頂点が示されている。本作中で写実的な描写が用いられた、やや頬が紅潮したアデーレの表情は寛いでいるようにも、緊張しているようにも見え、胸の前で組まれた両手と共に複雑な感情や性格を感じさせる。一方、エジプト美術から着想が得られている三角形の目によって装飾されるアデーレの身に着けたドレスを始め、その上に羽織られる流々と広がった布衣、そしてアデーレの背後の大小様々な円形で構成される文様は、画面の中で一体となり心地よいリズムを刻んでいる。この優れた装飾性こそ本作の最も注目すべき点であり、今なお観る者を魅了する。またアデーレが座る椅子の渦巻模様(唐草模様)も画家が好んだ異国趣味の表れであるほか、画面下部に配された金色と対比する緑色は、色彩のアクセントとして有効的にその効果を発揮している。なお本作はかつてナチスに没収され、戦後は国家所蔵の美術品としてオーストリア美術館に所蔵されていたものの、元の所有者であるフェルディナント・バウアーの姪マリア・アルトマンが所有権を訴えて裁判を起こし、勝訴。2006年のオークションで競売にかけられ、化粧品会社エスティー・ローダー会長ロナルド・ローダー氏が当時、史上最高値となる1億3500万ドル(約160億円)で落札し、現在は同氏が所有するニューヨークのノイエ・ギャラリーで(永久貸出として)展示されている。なお画家は1912年にもアデーレ・ブロッホ=バウアー氏の肖像画『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 II』を制作している。

関連:1912年制作 『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 II』


【全体図】
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写実的に表現されるアデーレ・ブロッホ=バウアーの顔。裕福な銀行家兼企業家フェルディナント・バウアーの妻アデーレ・ブロッホ=バウアーが描かれる本作には、自然主義的な写実表現と、金箔・銀箔を多用した、豪奢で華麗な平面的装飾性を融合させた、クリムト独自の表現・様式美の頂点が示されている。



【写実的に表現されるアデーレの顔】
エジプト美術から着想が得られている三角形の目。この三角形の目で装飾されるアデーレの身に着けたドレスを始め、その上に羽織られる流々と広がった布衣、そしてアデーレの背後の大小様々な円形で構成される文様は、画面の中で一体となり心地よいリズムを刻んでいる。



【エジプト美術の三角形の目】
色彩のアクセントとして効果を発揮する緑色部分。本作は2006年のオークションで競売にかけられ、化粧品会社エスティー・ローダー会長ロナルド・ローダー氏が史上最高値となる1億3500万ドル(約160億円)で落札し、現在は同氏が所有するニューヨークのノイエ・ギャラリーで(永久貸出として)展示されている。



【アクセントとして効果を発揮する緑色】

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