Description of a work (作品の解説)
2008/05/08掲載
Work figure (作品図)
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ユディト I(ユーディット I)

 (Judith I) 1901年
82×42cm | 油彩・画布 | オーストリア美術館(ウィーン)

ウィーン分離派を代表する画家グスタフ・クリムトの傑作『ユディト I(ユーディットとホロフェルネス I)』。本作に描かれるのは、旧約外典(旧約続編、第二正典)のユディト記に記された美しい女≪ユディト≫の姿である。≪ユディト記≫とは、美しく裕福な未亡人ユディトの住むベツリアへ、アッシリア王ネブカドネツァルの命により、将軍ホロフェルネスが軍を率いて侵攻するも、暗殺を目論むユディトが将軍ホロフェルネスの気を惹くために近づき、酒宴に招かれたその夜、酔いつぶれた将軍の首を切り落とし、ベツリアの街を救ったとされる逸話であるが、本作では英雄的な姿でユディトを描くのではなく、匂い立つような妖艶性と官能性を全面に押し出し表現されているのが最も大きな特徴である。薄く唇をあけ、白い歯を見せるユディトは恍惚とも怠惰とも解釈できる不可思議な表情を浮かべ、その視線はあたかも観る者を淫靡に挑発しているかのようである。また金色で装飾されたユディトの身に着ける薄透の衣服や、そこから微かに見える右乳房などは、観る者に対して直接的に肌を露出し表現するよりも、よりエロティックな妄想や官能性を掻き立てる効果を生み出している。さらに古代アッシリアのレリーフの断片に着想が得られている背景の、黄金と黒色による豪奢で平面的な画面構成や色彩表現は、ユディトの美しい肌と見事に対比している。本作に描かれるユディトのモデルについては、裕福な銀行家兼企業家フェルディナント・バウアーの妻アデーレ・ブロッホ=バウアーと考えられており、一部の研究者たちからは一時的に画家と愛人関係にあったとする説も唱えられている(クリムトは後にアデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像画を二点手がけている)。なお画家は数年後(1909年)に、同主題の作品『ユディト II』を制作している。

関連:ヴェネツィア近代美術館所蔵 『ユディト II』


【全体図】
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恍惚とも怠惰とも解釈できる不可思議な表情。本作に描かれるのは、旧約外典(旧約続編、第二正典)のユディト記に記された美しい女≪ユディト≫の姿で、匂い立つような妖艶性と官能性を全面に押し出し表現されているのが最も大きな特徴である。



【恍惚とも怠惰とも解釈できる表情】
金色で装飾された豪華な首輪。金色で装飾されたユディトの身に着ける薄透の衣服や、そこから微かに見える右乳房などは、観る者に対して直接的に肌を露出し表現するよりも、よりエロティックな妄想や官能性を掻き立てる効果を生み出している。



【金色で装飾された豪華な首輪】
切り落とされた将軍ホロフェルネスの首。古代アッシリアのレリーフの断片に着想が得られている背景の、黄金と黒色による豪奢で平面的な画面構成や色彩表現は、ユディトの美しい肌と見事に対比している。



【将軍ホロフェルネスの首】

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