Description of a work (作品の解説)
2008/05/09掲載
Work figure (作品図)
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死と生

 (Tod und Leben) 1911-16年
178×198cm | 油彩・画布 | レオポルト・コレクション

オーストリアで活動した大画家グスタフ・クリムト晩年の代表する作品のひとつ『死と生』。1911年に制作が開始され、同年ローマ国際美術展で第一等を獲得するものの、その後大幅に加筆修正され、最終的な完成までに5年もの歳月がかけられた本作は人間の≪生≫と≪死≫の対峙・循環を画題とした作品である。クリムトは≪生≫と≪死≫に対する意識やその対比をこれまでの作品の中でも度々描き入れてきたが(例:希望 I)、大人、子供、男、女、若人、老人など人生の様々な段階で描かれる10人もの人々が、忍び寄る≪死≫に対抗するように、互いに寄り添い、ひとつの塊となることで≪生≫を護り、生き抜く糧(そして希望)としているかのようである。しかしその中で数人は目を瞑り、眠っているような姿で描かれているなど、≪生≫そのものの中にも≪死≫の存在を暗示させている。本作には≪生≫や≪命≫へのリビドーとしてのエロス、そして、それと対極の位置にある≪死≫や≪消滅≫としてのタナトスが象徴的かつ寓意的に表現されており、特に多様な十字架の文様が装飾された衣を身に纏った、棍棒を持ち不適に笑みを浮かべるタナトスの姿は、観る者に強い精神的圧迫を強いる。またマティスに始まるフォービズム(野獣派)の画家たちやアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、そして若きエゴン・シーレなどの台頭によって、ウィーン総合芸術展での成功により得た名声に陰りが見え始めた画家が、自身が確立した金色を使用した豪華で装飾性豊かな表現様式を捨て、多色的な色彩表現に新たな道を見出した為に、元々は金色で描写されていた本作の背景は、後に人生の淵を思わせる藍緑色で塗り潰されている。さらにこの背景色の変更と同時に、≪死≫タナトスの姿や画面右側の群衆も4人追加された。


【全体図】
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≪生≫に忍び寄る≪死≫。1911年に制作が開始され、完成までに5年もの歳月がかけられた本作は人間の≪生≫と≪死≫の対峙・循環を画題とした作品である。



【≪生≫に忍び寄る≪死≫】
多様な十字架の文様が装飾された≪死≫の衣。多様な十字架の文様が装飾された衣を身に纏った、棍棒を持ち不適に笑みを浮かべるタナトスの姿は、観る者に強い精神的圧迫を強いる。



【十字架の文様が装飾された死の衣】
互いに寄り添いひとつの塊となる≪生≫。大人、子供、男、女、若人、老人など人生の様々な段階で描かれる10人もの人々が、忍び寄る≪死≫に対抗するように、互いに寄り添い、ひとつの塊となることで≪生≫を護り、生き抜く糧(そして希望)としているかのようである。



【寄り添いひとつの塊となる≪生≫】
クリムトが新たに見出した多色的な色彩表現。ウィーン総合芸術展での成功により得た名声に陰りが見え始めた画家が、自身が確立した金色を使用した豪華で装飾性豊かな表現様式を捨て、多色的な色彩表現に新たな道を見出した。



【新たに見出した多色的な色彩表現】

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