2009/07/16掲載
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ユピテルとエウロペ(エウロペの略奪)(Jupiter et Europe) 1868年 175×130cm | 油彩・画布 | ギュスターヴ・モロー美術館
ユピテルの神々しさに魅了されるエウロペ。1869年のサロンに出品された本作は、古代ローマの偉大なる詩人オウィディウスの詩集≪転身物語≫にも登場する、最も有名な神話≪エウロペの略奪≫を主題に制作された作品で、同サロンでは独創性の乏しさや、形態的不正確性から酷評を受けてしまい、永い間、画家の自宅にて保管されていたことが知られている。
【ユピテルに魅了されるエウロペ】
顔面のみを人間の姿に戻す主神ユピテル。モロー自身が本作に対して「私は美しく高貴なアラベスク模様に惹かれてはいるが、最も重要視したのは主題を≪表現≫することだ」と述べているよう、本作では丹念な筆触によって画面内へ描き込まれる全ての要素が、本主題≪エウロペの略奪≫の詩情性や内面的性格を表す目的で配されている。
【顔面のみを戻す主神ユピテル】
雄々しく猛々しい肉体の運動性。本作の画面のほぼ中央へ雄牛に心を許したエウロペの美しい姿が官能性豊かに描写されており、エウロペは雄牛(主神ユピテル)へ身体を預けながら視線をユピテルへと向けている。雄牛に姿を変えた主神ユピテルは顔面のみを人の姿に戻し、エウロペと呼応するかのように視線を交わらせている。
【雄々しく猛々しい肉体の運動性】 |