2010/07/22掲載
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栄光のヘレネ(Hélène glorifiée) 1887-97年頃19×12cm | 油彩・画布 | ギュスターヴ・モロー美術館
象徴性著しいヘレネの姿。本作は前世紀(18世紀)における最も著名な詩人・小説家のひとりゲーテの最重要長編戯曲≪ファウスト≫第2部第1幕より登場する、ギリシア神話において人間界最高の美女であり、またトロイア戦争の切欠ともなったスパルタ王テュンダレオスと王妃レダの娘≪ヘレネ≫を主題とし、モローの独自解釈に基づいて制作された象徴性の著しい作品である。
【象徴性著しいヘレネの姿】
煌々と輝く赤いひとつ星。絶世の美女と名高きヘレネは、もはやその顔貌は消失し、僅かな陰影によってようやく目鼻口の造形を確認できるほどの描写に留められており、純化(単純化)されたヘレネの表現にはモローの絵画制作における女性図像の象徴的昇華を見出すことができる。
【煌々と輝く赤いひとつ星】
ヘレネの周囲に配される古代の人物たち。ヘレネの上部には明々と(加えてやや毒々しく)光り輝くひとつ星(又は生の終焉を象徴する宵の明星)と円光が配され、ヘレネの右手には純潔の象徴たる白百合が一輪持たされている。
【ヘレネの周囲に配される古代の人物】 |