2009/10/14掲載
■
ヤコブと天使(Jacob et l'ange) 1878年253.3×145.4cm | 油彩・画布 | フォッグ美術館
涼しげな表情を浮かべる天使の姿。1878年のパリ万国博覧会に出品された本作に描かれる主題は≪天使とヤコブの戦い(イスラエルの命名)≫で、通常、本主題≪天使とヤコブの戦い≫ではヤコブと天使の激しい組打ちの姿が描かれるものの、モローは本作において主題を、父なる神の絶対なる力の象徴である≪天使≫に対する人間の無力≪ヤコブ≫と解釈し、描写しているのが大きな特徴である。
【涼しげな表情を浮かべる天使の姿】
天使によって力を抑えられるヤコブ。画面中央に配されるアブラハムの孫ヤコブは天使に腕を掴まれ、必死の形相で抵抗を試みるものの、その圧倒的な力に抗うことができない無力な姿で描き込まれている。
【天使によって力を抑えられるヤコブ】
朝を告げる太陽が昇る遠景。モローはドラクロワの『ヤコブと天使の戦い(部分)』をを「ドラクロワは全く理解せずありきたりに表現した」と、天使(神)と人間の対等的な物質的力関係として否定し、「わたしの作品は卓越した道徳的で精神的な力の身体的な力に対する優位性を表現しており、私はこの作品でそれに成功した」と本作について述べている。
【朝を告げる太陽が昇る遠景】 |