Description of a work (作品の解説)
2009/11/02掲載
Work figure (作品図)
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庭園のサロメ

 (Salomé au jardin) 1878年
72×43cm | 水彩・紙 | 個人所蔵

19世紀フランス象徴主義の先駆者ギュスターヴ・モローを代表する作品のひとつ『庭園のサロメ』。1878年頃に制作され、約10年後の1886年に開催された生前のモロー唯一の個展に出品された際には大好評を博した本作は、画家が『出現』などでも主題として取り上げている、ユダヤ王ヘロデ=アンティパスの姪で、その後妻ヘロデヤの娘≪サロメ≫が洗礼者聖ヨハネの首を盆に乗せ運ぶ場面を描いた作品である。画面中央に配されるサロメは、まるで聖母のような穏やかで慈愛に満ちた笑みを浮かべながら自らが運ぶ洗礼者聖ヨハネの首へと静かに視線を向けている。サロメの足下には斬首された洗礼者聖ヨハネの身体がおどろおどろしい様子で描き込まれており、サロメの温和な様子と異様な対比を示している。さらに画面左側奥ではこの様子を目の当たりにし、思わず逃げ出す刑の執行人らが配されている。ルネサンス期に活躍したパドヴァ派の巨匠アンドレア・マンテーニャに影響を受けた本作のクマシデ(カバノキ科の落葉広葉樹)の深緑に包まれた庭園の東屋は輝くような光によって美しくサロメらを包み込んでおり、その光景はあたかも神話上の一場面的な印象を観る者に与えるが、本作に描かれる己の欲望に従い残虐な殺人とその結果(洗礼者ヨハネの首)を求め、それにひとときの満足感を抱くサロメの本質は、ファム・ファタル(運命の女・悪女)そのものである。なお本作は個展出品後、モローの支持者や蒐集家たちから熱烈な人気を集め、彼らの強い要望により数点のヴァリアントが制作されている。


【全体図】
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穏やかな表情を浮かべるサロメの姿。本作は画家が『出現』などでも主題として取り上げている、ユダヤ王ヘロデ=アンティパスの姪で、その後妻ヘロデヤの娘≪サロメ≫が洗礼者聖ヨハネの首を盆に乗せ運ぶ場面を描いた作品である。



【穏やかな表情を浮かべるサロメ】
斬首された洗礼者聖ヨハネ。画面中央に配されるサロメは、まるで聖母のような穏やかで慈愛に満ちた笑みを浮かべながら自らが運ぶ洗礼者聖ヨハネの首へと静かに視線を向けている。サロメの足下には斬首された洗礼者聖ヨハネの身体がおどろおどろしい様子で描き込まれており、サロメの温和な様子と異様な対比を示している。



【斬首された洗礼者聖ヨハネ】
おぞましい光景に思わず逃げ出す執行人たち。深緑に包まれた庭園の東屋は輝くような光によって美しくサロメらを包み込んでおり、その光景はあたかも神話上の一場面的な印象を観る者に与えるが、本作に描かれる己の欲望に従い残虐な殺人とその結果を求め、それにひとときの満足感を抱くサロメの本質は、ファム・ファタル(運命の女・悪女)そのものである。



【この光景に思わず逃げ出す執行人】

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