Description of a work (作品の解説)
2010/02/08掲載
Work figure (作品図)
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旅人オイディプス(死の前の平等)


(Edipe voyageur (l'Égalité devant la mort)) 1888年頃
124×93cm | 油彩・画布 | メッツ美術館

フランス象徴主義の画家ギュスターヴ・モロー晩年期の代表的な作品のひとつ『旅人オイディプス(死の前の平等)』。本作はギリシア神話に登場するテバイの住人を苦しめていた女性の頭部と獅子の肉体を持つ怪物スフィンクスを退治するためにテバイの岩山へと赴く英雄≪オイディプス≫を描いた作品であるが、画家が名を馳せる要因となった1864年にサロンへ出品された同主題の作品『オイディプスとスフィンクス』と比較すると、解釈、雰囲気、描写手法全てが全く異なることが明確に示されている。モロー自身は本作について「人生の重荷に萎縮しながら傾斜を登り、オイディプスは高台に着く。そこには女の顔をした怪物スフィンクスが自然の祭壇の上で待ち構えている。ここには全てのものに対する謎が存在する。それは勝利か、破滅(死)か、最後の試練なのだ。神秘的で恐ろしい力によって死した者らの死骸が散乱している。これらは弱き魂には死を、強き魂には勝利をもたらす力の犠牲者なのだ。テバイの岩山と暗い海が曇った地平を完全に閉ざし、生死の祭壇の先には深淵が口を開いている。人間はその前を震えながら通るのだ。」と述べている。画面左側に配される英雄オイディプスは己の過酷な人生(※オイディプスは父殺し、母との姦通など罪深き者でもある)を象徴するかのように杖を突きながら項垂れ、その様子は疲弊そのものである。画面中央に配される怪物スフィンクスは祭壇的な供物台に陣取りながら右前足を聖遺物匣に乗せつつ、あたかも審判者のような様子でオイディプスへと視線を向けている。そして画面右側にはスフィンクスの力によって死した(モローが述べるところの)弱き魂の持ち主の死体が散乱しており、恐々とした雰囲気を醸し出させている。なお本作の副題としてしばしば用いられる「死の前の平等」であるが、モロー自身が付けたものではなく、おそらくは同時代の詩人ロベール・ド・モンテスキューの「死の前の平等を表すスフィンクス」に基づいていると考えられている。


【全体図】
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杖を突きながら項垂れるオイディプスの姿。本作はギリシア神話に登場するテバイの住人を苦しめていた女性の頭部と獅子の肉体を持つ怪物スフィンクスを退治するためにテバイの岩山へと赴く英雄≪オイディプス≫を描いた作品である。



【杖を突きながら項垂れるオイディプス】
眼を見開くスフィンクスの姿。画面中央に配される怪物スフィンクスは祭壇的な供物台に陣取りながら右前足を聖遺物匣に乗せつつ、あたかも審判者のような様子でオイディプスへと視線を向けている。



【眼を見開くスフィンクス】
散乱する弱き魂の者たちの死体。本作の副題としてしばしば用いられる「死の前の平等」はおそらく、同時代の詩人ロベール・ド・モンテスキューの「死の前の平等を表すスフィンクス」に基づいていると考えられている。



【散乱する弱き魂の者たちの死体】

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