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サビニの女たちの略奪
(Enlévement des Sabines) 1634-38年
154.6×209.9cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館 |
17世紀フランス古典主義の大画家ニコラ・プッサン1630年代を代表する作品のひとつ『サビニの女たちの略奪』。本作の詳しい制作意図や目的は不明であるも、古くから多くの芸術の庇護者らに好まれ、ピエトロ・ダ・コルトーナを始め多くの画家が手がけるなど16〜17世紀では既に一般的であった主題のひとつ≪サビニの女たちの略奪≫を主題に描かれており、新古典主義の巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドも、このニコラ・プッサンが手がけた≪サビニの女たちの略奪≫を参考にして、同主題の作品を描いたことが知られている。本作の主題≪サビニの女たちの略奪≫は、古代ローマの歴史家ティトゥス=リウィウス著『ローマ建国史』などに記されるローマ建国の伝説から、ローマ市建設の時、女性が少なかった市の建設者ロムルスの発案により、サビニなど近隣の村人をローマの祭りへ誘い、未婚の女性を略奪したとされる逸話で、女性の略奪という官能性を含みつつ、躍動・力動に富んだ内容である為、バロック芸術では盛んに描かれた主題でもある。本作においてニコラ・プッサンの大きな特徴で、後のアカデミズム的絵画理論に多大な影響を与えた、略奪するローマ人らの強引かつ力強い身体の動きや、それを拒絶しながらも連れ去られるサビニの女性らの身振りなど登場人物の的確な描写による群集構図を用いた説明的な場面表現や構成が展開されており、この1630年代にはプッサンの古典様式的手法がある程度形成されていたことが本作に示されている。なお、ほぼ同年頃に手がけられたと推測される同主題の『サビニの女たちの略奪』がルーヴル美術館に所蔵されている。
関連:ルーヴル美術館所蔵 『サビニの女たちの略奪』
関連:ピエトロ・ダ・コルトーナ作 『サビニの女たちの略奪』
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