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若い歌手 (Jeune chanteur) 1622-1623年頃
95×90cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
17世紀のフランスで活躍したカラヴァッジェスキの画家クロード・ヴィニョンの代表作『若い歌手』。作品制作の意図や目的は不明であるが、北方のカラヴァッジェスキ一派の間で盛んに描かれた若い(少年)歌い手の半身像を主題とした本作には、明らかに16世紀後半のイタリア絵画の巨匠カラヴァッジョ作品にみられる風俗的要素や雰囲気が含まれている。カラヴァッジョ初期における最大の傑作のひとつ『女占い師(ジプシー女)』(※現ルーヴル美術館所蔵)に登場する、身なりのよい服装と刀剣を纏った若い街中の男と、ほぼ同様の衣服を身に着けるこの若き歌い手は、楽譜を両手に持ち、横目でやや右方向に視線を傾けている。そこには、このあどけない少年が瞬間的にみせる極めて自然な表情が見事に捉え描写されており、その観る者を魅了して、この世界観へ惹きこむのである。また画家の太い筆跡を強く残す独特の描写的特長が顕著に表れた、若い歌手の右腕などに示される描写は、画面の中に絶妙な変化と軽やかな運動性を与えているだけでなく、本作の印象をより強める効果も生み出している。ここで指摘したカラヴァッジェスキ的な描写手法や表現は、同時代の様々な様式を取り入れたクロード・ヴィニョン独自の様式を論ずるに欠かせない要素であり、本作はそれらが最も顕著かつ効果的に示された最良の作品のひとつとして、特に重要視されている。
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