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Introduction of an artist(アーティスト紹介)

クロード・ヴィニョン Claude Vignon
1593-1670 | フランス | バロック・カラヴァッジェスキ一派

17世紀フランスのバロック画家兼鑑定家。独特の厚筆による濃潤な描写や、やや深めの陰影表現を用い、同時代のフランス画家としては最も多くの作品を残した。基本的には16世紀後半のイタリア絵画の巨匠カラヴァッジョを源流とするカラヴァッジェスキ様式であるが、後期マニエリスム的表現やヴェネツィア派的表現など様々な表現様式を研究し、自身の作品へ取り入れている。ヴィニョンは没後、忘れられた存在であったが、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール同様20世紀になって再発見・再評価された画家のひとりである。1593年トゥールに生まれ、後期マニエリスムの画家であったジョルジュ・ラルマンやビュネルに師事。1610年から6年間イタリアへ赴き、1616年に一時パリへ戻るも、1623年から再びイタリア、また1624年にはスペインへを旅行し、以後、生涯中に度々これらの地を訪れている。1624年スペインから帰国後はパリに定住。1653年には王立絵画・美術アカデミーの顧問(教授職にも就いていたと推測される)に就任。フランス国内の聖堂のための宗教画や歴史画、肖像画のほか、風俗画や寓意画など多種多様なジャンルを描き、フランスのカラヴァッジェスキ一派で大成した画家のひとりとなった。1670年パリで没、享年77歳。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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若い歌手 (Jeune chanteur) 1622-1623年頃
95×90cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

17世紀のフランスで活躍したカラヴァッジェスキの画家クロード・ヴィニョンの代表作『若い歌手』。作品制作の意図や目的は不明であるが、北方のカラヴァッジェスキ一派の間で盛んに描かれた若い(少年)歌い手の半身像を主題とした本作には、明らかに16世紀後半のイタリア絵画の巨匠カラヴァッジョ作品にみられる風俗的要素や雰囲気が含まれている。カラヴァッジョ初期における最大の傑作のひとつ『女占い師(ジプシー女)』(※現ルーヴル美術館所蔵)に登場する、身なりのよい服装と刀剣を纏った若い街中の男と、ほぼ同様の衣服を身に着けるこの若き歌い手は、楽譜を両手に持ち、横目でやや右方向に視線を傾けている。そこには、このあどけない少年が瞬間的にみせる極めて自然な表情が見事に捉え描写されており、その観る者を魅了して、この世界観へ惹きこむのである。また画家の太い筆跡を強く残す独特の描写的特長が顕著に表れた、若い歌手の右腕などに示される描写は、画面の中に絶妙な変化と軽やかな運動性を与えているだけでなく、本作の印象をより強める効果も生み出している。ここで指摘したカラヴァッジェスキ的な描写手法や表現は、同時代の様々な様式を取り入れたクロード・ヴィニョン独自の様式を論ずるに欠かせない要素であり、本作はそれらが最も顕著かつ効果的に示された最良の作品のひとつとして、特に重要視されている。

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