Description of a work (作品の解説)
2008/03/09掲載
Work figure (作品図)
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ヴェネツィア、大運河の入り口


(Venice, entrée du Grand Canal) 1905年
73.5×92cm | 油彩・画布 | トリド美術館(オハイオ州)

新印象派の画家ポール・シニャック後期の代表的作品のひとつ『ヴェネツィア、大運河の入り口』。本作は画家が滞在したヴェネツィアの風景を描いた作品で、新印象主義(点描主義)の創始者ジョルジュ・スーラの死後(1891年以後)、急速にスーラの影響から逸脱していったシニャックの独自的な絵画展開が本作には顕著に示されている。シニャックは本作を手がける数年前にロンドンへと渡り、シニャック自ら「彼の作品は何にも束縛されず、自由に、色彩のための色彩を創造し、それを描かなければならないことを証明している。最も優れた色彩家は、最も創造する者であるのだ。」と語るほど、同地のロマン主義の風景画家ウィリアム・ターナーの色彩表現に強い刺激を受けたことが知られており、本作の幻想的にすら感じられる鮮やかな色彩は、明らかに画家が過去(スーラの生前)崇拝、傾倒していた色彩理論に基づくものではなく、ターナーの作品から学んだ独自の色彩的展開に他ならない。特に遠景の大聖堂や大運河沿いの街並みの、心象的でありながら色彩固有の美しさも感じられる点描表現は、スーラの生前におけるシニャックの作品には見られない独自性であり、特に注目すべき部分である。またそれとは対称的に、強い色調で描かれる近景のゴンドラや漕ぎ手、搭乗客、彩色パリーナ(ゴンドラを岸に繋げるための杭)は、本作を観る者に対して、明確な存在感を示している。なお本作以外に、画家がヴェネツィアの風景を描いた作品としては『緑の帆船、ヴェネツィア』などが知られている。

関連:オルセー美術館所蔵 『緑の帆船、ヴェネツィア』


【全体図】
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遠景に見えるヴェネツィアの大聖堂。本作は画家が滞在したヴェネツィアの風景を描いた作品で、新印象主義(点描主義)の創始者ジョルジュ・スーラの死後(1891年以後)、急速にスーラの影響から逸脱していったシニャックの独自的な絵画展開が本作には顕著に示されている。



【遠景に見えるヴェネツィアの大聖堂】
大運河沿いの美しい街並み。遠景の大聖堂や大運河沿いの街並みの、心象的でありながら色彩固有の美しさも感じられる点描表現は、スーラの生前におけるシニャックの作品には見られない独自性であり、特に注目すべき部分である。



【大運河沿いの美しい街並み】
強い色調によって描写されるゴンドラと乗り手。本作の幻想的にすら感じられる鮮やかな色彩は、明らかに画家が過去(スーラの生前)崇拝、傾倒していた色彩理論に基づくものではなく、ターナーの作品から学んだ独自の色彩的展開に他ならない。



【強い色調によって描写されるゴンドラ】
画面左端に描かれる色鮮やかな彩色パリーナ(ゴンドラを岸に繋げるための杭)。強い色調で描かれる近景のゴンドラや漕ぎ手、搭乗客、彩色パリーナ(ゴンドラを岸に繋げるための杭)は、本作を観る者に対して、明確な存在感を示している。



【色鮮やかな彩色パリーナ】

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