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美徳の寓意 (Allegoria del Virtù) 1532-1534年頃
141×86cm | テンペラ・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
マニエリスム期の大画家コレッジョによる最後の作品『美徳の寓意』。マントヴァを統治していた名家ゴンザーガ家に嫁ぎ、同地の芸術振興に多大な貢献をしたイザベラ・デステの書斎を飾るために『悪徳の寓意』と共に、対画として制作された本作に描かれるのは、本来は人間の価値を具現化したもので、キリスト教においては信徳、望徳、愛徳の三体神徳に、古代から継承される賢明、節制、剛毅、正義の四枢要徳を加えた≪美徳≫の寓意で、本作では擬人化された三人の女性によって表現されている。優雅で洗練されながらも大胆に構成された画面の中に高い運動性、明瞭で豊かな色彩、三人の女性や天使らに示される甘美な表情などコレッジョ独自の様式が如何なく発揮されている。特に輝きと清潔感に満ちた明るい色彩の表現は、≪美徳≫という本作の主題を見事に表しており、画家の遺作となった本作の最も注目すべき点のひとつである。なお≪美徳≫を扱うの寓意画は絵画の祖とも呼ばれているゴシック絵画最大の巨匠ジョットやヴェネツィア派の巨人ティツィアーノを始め、古くから幾多の画家が描いてきた主題であり、キリスト教美術において≪美徳≫を構成する7つの要素、すなわち≪信徳、望徳、愛徳、賢明、節制、剛毅、正義≫は必ずしも全て描かれる訳ではなく、時代、状況、用途、趣向によって解釈や表現は様々である。
関連:コレッジョ作 対画『悪徳の寓意』
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