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春(ラ・プリマベーラ)
(La Primavera)1482年頃
315×205cm | テンペラ・板 | ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
ヴァザーリにより題名は付けられた、ボッティチェリ随一の代表作『春(プリマベーラ)
』。愛と美の女神ヴィーナスを中心に、左にヘルメス・三美神、右に春の女神プリマヴェーラ・花の女神フローラ・西風ゼフェロスを配する本作に描かれる主題は、≪ヴィーナスの王国≫と推測されているが、その解釈については諸説あり15世紀に描かれた絵画の中でもっとも難解とされる。画面中央に配される着衣のヴィーナスは『世俗のヴィーナス』を表わしているとされている(『
ビーナスの誕生』に描かれている裸体のヴィーナスは『天上のヴィーナス』を表すとされている。また本作中に描かれる春の≪女神プリマヴェーラ≫≪花の女神フローラ≫≪西風ゼフェロス≫は、≪春の女神プリマヴェーラ≫を≪花の女神フローラ≫と、≪花の女神フローラ≫を≪クロリス(フローラの別名称)≫と解釈されることもある。さらにアグライア(輝き)、エウフロシュネー(喜び)、タレイア(花の盛り)を意味する幾多の画家が描いてきた三美神の描写は、ルネサンス期の絵画作品の中でも特に優れており、
ラファエロの描いた
三美神と共に、卓越した表現や図像展開からルネサンスを代表する三美神として広く認知されている。