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叛逆天使の墜落 (The Fall of the Rebel Angels) 1562年
117×162cm | 油彩・板 | ブリュッセル王立美術館 |
大画家ピーテル・ブリューゲルを代表する作品のひとつ『叛逆天使の墜落』。本作に描かれるのは大天使ミカエルが率いる天使軍≪善徳≫と、天を追放され冥界へ落された神の敵対者である堕天使サタン(ルシファー)を始めとした魔界軍≪悪徳≫との対決≪叛逆天使の墜落≫場面である。堕天使サタン(ルシファー)を始めとした魔界軍の極めて異形的な姿と、≪善徳≫と≪悪徳≫を図像として同等に扱っていることは、本作に示される画家ブリューゲルの最も大きな特徴として特筆すべき点である。通常、このような≪善徳≫と≪悪徳≫の対峙を扱った主題ならば、伝統的に父なる神の使徒≪大天使ミカエル≫を中心とした天使軍(善徳)の圧倒的な存在感と勝利が描かれる(例:ドメニコ・ベッカフーミ作『叛逆天使を退治する大天使ミカエル』)のに対し、本作では≪善徳≫と≪悪徳≫が繰り広げる、渾然とした闘争場面の描写に注力され、それは画面全体を支配する混沌とした場面表現や、天上の光の中から≪善徳≫と≪悪徳≫が入り乱れ降下してくる姿としても示されている。また魔界軍の異形的姿には先人ヒエロニムス・ボスからの影響を如実に感じさせ、本作においては類稀な個性として圧倒的な存在感を示している。
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