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ポルティナリの祭壇画 (The Portinari Altarpiece)
1475-76年 | 96×141.5cm | 油彩・板 | ウフィツィ美術館 |
初期ネーデルランド絵画の画家ヴァン・デル・フース最大の傑作『ポルティナリの祭壇画』。諸外国まで名声が轟いていた名家メディチ家のブルッヘにおける代理人トマッソ・ポルティナリのフォレンツェ私用礼拝堂の三連祭壇画として制作された本作の中央に描かれるのは、神の子イエスがベツレヘムの厩で生まれる場面≪キリストの降誕≫で、左翼部分には聖トマスと大修道院長アボットの2聖人に依頼主トマッソ・ポルティナリと息子のアントニオ、ピジェロが、右翼部分には聖マルガリータと聖マグダレーナの2聖女に依頼主の妻マリア・ボロンチェルリと娘マリアが描かれている。本作において最も重要な部分は、自然主義的写実表現の逸脱が示される多様な尺度を用いた登場人物の配置による象徴性と表現性の高い空間的表現にある。≪キリストの降誕≫部分では聖母マリアや夫である聖ヨセフ、大天使からのお告げを受け降誕の場へと導かれた羊飼いら主要な登場人物を画面全体に配しながらも、数多く描かれたひとまわり小さく描かれる天使達によって、高い聖性を保ちながら本場面を象徴的に表現することに成功している。また尺度に違いを出すことによって空間的構成にも高い表現性が見られる。同様に左右両翼部分においても諸聖人らに比べ依頼主ら現実の人物を小さく描くことによって、諸聖人らがより高位に在ることを示すだけではなく、同時に構成的変化による格調高い独特に緊張感を生み出されている。依頼主トマッソ・ポルティナリが本作をフィレンツェの画家ではなくヴァン・デル・フースに依頼したことはヴァン・デル・フースの画家としての名声を示すひとつの要素であり、本作がフィレンツェに到着した際、フィレンツェの画家らから多大な賞賛を受けたことが知られている。
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