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Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像

ヒューホ・ヴァン・デル・フース Hugo van der Goes
1440-1482 | ネーデルランド | 初期ネーデルランド絵画

初期ネーデルランド絵画におけるヤン・ファン・エイクロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン以降の第2世代最大の巨匠。大気に満ちた雄大な風景表現や高度な整合性が見られる画面構成と初期ネーデルランド絵画伝統の自然美的細密描写を用い、画家の師であったウェイデンとは一線を画す象徴性と表現性の高い独自の様式を確立。画家としての生い立ちの詳細は特定が難しいが、1467年ヘントの画家組合に登録し、翌年には国際的環境の整ったブルッヘでも活躍。1474-75年には画家組合長に就任しさらなる国際的名声を博すも同年、突如引退を宣言、40歳近くになって助修士としてブリュッセル近郊ローデンダーレ修道院に入る。同院でも絵画制作を続けるが、巨匠ヤン・ファン・エイクの傑作『ヘント(ゲント)の祭壇画』への劣等感と苦悩も手伝い、精神が危機的状態に陥ったと伝えられ1481年に自殺を図る。この頃の作品には画家自身の内面の苦悩や生への不安など如実に表れており、独特の雰囲気と緊張感が画面を支配している。翌1482年死去。現存する総作品数はコピーを含め約50点とされる。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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ポルティナリの祭壇画 (The Portinari Altarpiece)
1475-76年 | 96×141.5cm | 油彩・板 | ウフィツィ美術館

初期ネーデルランド絵画の画家ヴァン・デル・フース最大の傑作『ポルティナリの祭壇画』。諸外国まで名声が轟いていた名家メディチ家のブルッヘにおける代理人トマッソ・ポルティナリのフォレンツェ私用礼拝堂の三連祭壇画として制作された本作の中央に描かれるのは、神の子イエスがベツレヘムの厩で生まれる場面≪キリストの降誕≫で、左翼部分には聖トマスと大修道院長アボットの2聖人に依頼主トマッソ・ポルティナリと息子のアントニオ、ピジェロが、右翼部分には聖マルガリータと聖マグダレーナの2聖女に依頼主の妻マリア・ボロンチェルリと娘マリアが描かれている。本作において最も重要な部分は、自然主義的写実表現の逸脱が示される多様な尺度を用いた登場人物の配置による象徴性と表現性の高い空間的表現にある。≪キリストの降誕≫部分では聖母マリアや夫である聖ヨセフ、大天使からのお告げを受け降誕の場へと導かれた羊飼いら主要な登場人物を画面全体に配しながらも、数多く描かれたひとまわり小さく描かれる天使達によって、高い聖性を保ちながら本場面を象徴的に表現することに成功している。また尺度に違いを出すことによって空間的構成にも高い表現性が見られる。同様に左右両翼部分においても諸聖人らに比べ依頼主ら現実の人物を小さく描くことによって、諸聖人らがより高位に在ることを示すだけではなく、同時に構成的変化による格調高い独特に緊張感を生み出されている。依頼主トマッソ・ポルティナリが本作をフィレンツェの画家ではなくヴァン・デル・フースに依頼したことはヴァン・デル・フースの画家としての名声を示すひとつの要素であり、本作がフィレンツェに到着した際、フィレンツェの画家らから多大な賞賛を受けたことが知られている。

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【全体図】
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聖母の死 (The Death of the Virgin) 1481年頃
146.71×21.1cm | 油彩・板 | ブルッヘ市立美術館

ヤン・ファン・エイクロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン以降の初期ネーデルランド絵画第2世代最大の巨匠ヴァン・デル・フースが最晩年に描き残したとされる傑作『聖母の死』。当時のネーデルランドで最も人気の高かったヴァン・デル・フースが40歳近くになって突如ローデンダーレ修道院に入った数年後、同修道院内で描かれた本作は大天使ミカエルから自身の臨終を聖告され、最後に今一度、息子イエスの弟子達に会いたいと願い、皆が雲に乗って集まった中その三日後にその時を迎えた、聖母マリアの生涯の物語の中で最も悲壮感に溢れる場面≪聖母の死≫であるが、ヴァン・デル・フースが晩年、強迫観念的に感じていたとされる全ての人間に訪れる絶対的な死への恐怖と、生きることへの不安が登場人物の心理描写に見事表現されている。本作では生気を全く感じさせない絶対的な聖母マリアの臨終を以って表されている生けるものへ必ず訪れる≪死≫と、それを取り囲む生ける人々である聖母の死の床を訪れたイエスの弟子達の抱く深い悲しみや、将来の仲間や自身の死への漠然とした不安が画面の中で異様な雰囲気を醸し出している。また画面上部に示される死した聖母の魂と肉体を迎えに来た無髭の主イエスと天使たちは白昼夢のように表現されるなど、本作にはヴァン・デル・フース自身の精神状態も如実に示されている。

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