Description of a work (作品の解説)
2008/12/23掲載
Work figure (作品図)
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老人の頭部

 (Tête de vieillard) 1767年頃
53×42cm | 油彩・画布 | ジャックマール=アンドレ美術館

18世紀ロココ様式末期を代表する巨匠ジャン・オノレ・フラゴナールの類稀な人物画のひとつ『老人の頭部』。パリのジャックマール=アンドレ美術館に所蔵される本作は≪老人の頭部≫を描いた極めて簡素な作品であるが、画家が王立絵画・彫刻アカデミーの準会員になった1765年の次(2年後)のサロンへ出品された同画題の作品『老人の頭部(別ヴァージョン)』とほぼ同時期に制作されたと考えられている。本作には1756年から1761年まで5年間にも及んだフラゴナールのイタリア旅行での成果が存分に示されており、表現手法にはティエポロフェデリコ・バロッチグエルチーノなど偉大なるイタリア絵画の巨匠らの影響を容易に見出すことができると共に、本作の対象(人物)への実直で真摯な取り組みには、オランダ絵画黄金期の大画家レンブラントの影響も指摘されている点は特に注目すべきである。画面のほぼ中央へやや斜めを向いた老人が重厚に配されているが、それを表現する筆触はティエポロを容易に連想させる軽やかさと奔放性に満ちており、特に荒々しい質感を感じさせるこめかみから頬にかけての筋肉の微妙な動きや毛羽立つかのような白髭の表現には画家の才気を感じずにはいられない。また眉間に皺を寄せ大きく目を見開いた老人の堂々とした姿や鋭い精神性などの表現も、若きフラゴナールの卓越した技量の表れである。さらに光の表現に注目しても、全体的な明瞭感と精神的心理性による静謐な空気の対比的描写を色彩によって見事に表現しており、観る者を強く作品の世界へと引き込んでいる。

関連:1767年頃制作 『老人の頭部(別ヴァージョン)』


【全体図】
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大きく目を見開いた老人の強張った表情。パリのジャックマール=アンドレ美術館に所蔵される本作は≪老人の頭部≫を描いた極めて簡素な作品であるが、1767年のサロンへ出品された同画題の作品『老人の頭部(別ヴァージョン)』とほぼ同時期に制作されたと考えられている。



【目を見開いた老人の強張った表情】
毛羽立つかのような白髭の表現。表現手法にはティエポロフェデリコ・バロッチグエルチーノなど偉大なるイタリア絵画の巨匠らの影響を容易に見出すことができると共に、本作の対象(人物)への実直で真摯な取り組みには、オランダ絵画黄金期の大画家レンブラントの影響も指摘されている。



【毛羽立つかのような白髭の表現】
ティエポロを容易に連想させる軽やかさと奔放性に満ちた表現。本作の光の表現に注目しても、全体的な明瞭感と精神的心理性による静謐な空気の対比的描写を色彩によって見事に表現しており、観る者を強く作品の世界へと引き込んでいる。



【軽やかさと奔放性に満ちた表現】

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