2010/01/10掲載
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キリストの磔刑(goya_cristo) 1780年255×153cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)
天を仰ぎ苦悶の表情を浮かべる受難者イエス。ゴヤが1780年に制作し、同年の5月5日にマドリッドの王立サン・フェルナンド美術アカデミーへ提出された、画家の同アカデミー入会審査作品としても知られる本作は≪キリストの磔刑≫という当時最も社会的地位が高かった主題のひとつ宗教を扱った作品である。
【苦悶の表情を浮かべる受難者イエス】
痛々しく杭で十字架に打ち付けられる手。本作のゴヤとしては極めて異例的な新古典主義表現は、本作が制作される前年に死去したメングスへの哀悼と、保守的な古典様式が尊ばれていた当時のアカデミー入会審査に合格するという目的意識を明確に感じることができる。
【杭で十字架に打ち付けられる手】
非常に端整で古典様式的な表現手法。画面中央へ描かれる受難者イエスは父なる神に訴えかけるように天を仰ぎながら苦悶の表情を浮かべているが、その姿は若きゴヤの支援者でもあった同時代のスペイン画壇の重鎮メングスの作品を模するかのように、端整に理想化された肉体描写がおこなわれている。
【非常に端整で古典様式的な表現手法】 |