Description of a work (作品の解説)
2008/04/28掲載
Work figure (作品図)
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日傘をさすブルターニュの女たち


(Bretonnes aux ombrelles) 1892年
81×105cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

象徴主義を代表する大画家エミール・ベルナールが手がけたクロワゾニスムによる代表的作例のひとつ『日傘をさすブルターニュの女たち』。本作に描かれるのは古き伝統が色濃く残るブルターニュの地の宗教的な祭事≪パルドン祭(キリスト教の聖人たちの像と旗を村道に沿って民衆が行進する、この地方独特の祭り)≫の準備をする五人の女たちである。エミール・ベルナールはクロワゾニスムの創始者を巡りポール・ゴーギャンと対立し、本作を手がける前年(1891年)には同氏と絶縁してしまう。この時、ゴーギャンはブルターニュを去りタヒチへと向かったが、エミール・ベルナールはブルターニュに留まり、他のポン・タヴェン派の画家たちとクロワゾニスム、そして総合主義(サンテティスム)の探求に邁進する。本作はそのような中で制作された作品でもあり、画家が抱いていたクロワゾニスムという表現手法への絶対的な自負や自信(確信)、そして信頼が本作には良く表れている。本作のパルドン祭の準備をおこなうブルターニュ地方の濃紺の民族衣装に身を包む女たちは誰とも話を交わることなく、中央の三人は大地に腰を下ろし、画面右側に配される二人は佇んでいる。画面中央やや上には画面の中で最も色調の強い赤色の日傘が、その隣にはやや薄い桃色の日傘が配されている。遠景にはブルターニュの未開発の風景が描かれているが、その空間的遠近感はほぼ皆無である。この平面的画面構成と、色目を惹く原色的な色面によって単純化(非写実化)された表現こそ、クロワゾニスムと総合主義の様式・表現的特徴であり、本作は総合主義を代表する作品としても広く知られている。また本作の静謐で厳かな雰囲気や、画面中央の地に座る女の無感情な横顔には、傑作『グランド・ジャット島の日曜日の午後』などを手がけた新印象派の創始者ジョルジュ・スーラからの影響が指摘されている。なお本作には対の作品として『雨傘をさすブルターニュの女たち』が同時期に制作されている。


【全体図】
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無表情・無感情に描かれる女たち。本作に描かれるのは古き伝統が色濃く残るブルターニュの地の宗教的な祭事≪パルドン祭(キリスト教の聖人たちの像と旗を村道に沿って民衆が行進する、この地方独特の祭り)≫の準備をする五人の女たちである。



【無表情・無感情に描かれる女たち】
平面的に構成される赤い日傘と女。本作のパルドン祭の準備をおこなうブルターニュ地方の濃紺の民族衣装に身を包む女たちは誰とも話を交わることなく、中央の三人は大地に腰を下ろし、画面右側に配される二人は佇んでいる。



【平面的に構成される赤い日傘と女】
単純化(非写実化)されたブルターニュの風景。この平面的画面構成と、色目を惹く原色的な色面によって単純化された表現こそ、クロワゾニスムと総合主義の様式・表現的特徴であり、本作は総合主義を代表する作品としても広く知られている。



【単純化されたブルターニュの風景】

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