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貝殻を持つ幼児たち (Niño de la concha)1670-1675年頃
104×124cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
風俗画的な表現を用いた愛らしい幼児の姿を描いたセビーリャ派の巨匠ムリーリョの代表的な作品のひとつ『貝殻を持つ幼児たち』。ムリーリョの代表作とされる『リベカとエリエゼル』や『善き牧者としての幼児キリスト』と同様、国王フェリペ5世の王妃イザベル・デ・ファルネシオのコレクションとして記載されていたことが知られている本作は神の子イエスと、旧約聖書における最後の預言者にして神の子イエスへ洗礼を施した聖人洗礼者聖ヨハネの姿がムリーリョの最も大きな特徴である風俗画的な表現を用いた愛らしい幼き姿にて描かれている。しかしながら神の子イエスは幼い姿をしながらも幼児洗礼者聖ヨハネに貝殻の器で水を与える姿は神々しく威厳と尊意に満ちており、また幼児聖ヨハネの持つ杖には「神の子羊を見よ」と記され、傍らに子羊を配すなど宗教画としての高い聖性をも表現している。なお幼児の姿の聖人像作品は当時のパトロンたちに人気があり、教会に納められる作品として描かれたのではなく個人の依頼によって描かれたと推測されるほか、本作で用いられる構図や高い運動性を示す表現などは、師であるカラッチの作品に霊感を受けたグイド・レーニが手がけた版画の影響と指摘されている。
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