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homeページCollection常設展示バロック美術
Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像

グイド・レーニ Guido Reni
1575-1642 | イタリア | バロック・ボローニャ派

17世紀のイタリア絵画において最も優美な作品を描いたボローニャ派の巨匠。ラファエロの再来と賞賛された古典主義的様式の中に、洗練された演劇性と感傷性、大胆な構想と計算された構図、均整のとれた人体の表現、豊かな色彩などを加え古典主義画派の指導者的存在となる。修行時代はマニエリスムの画家デニス・カルヴァールトに師事した後、アンニーバレ・カラッチらカラッチ一族によって創設された美術アカデミー≪アカデミア・ディ・デジデロージ≫に入門。多くの門下生の中で頭角を表し、1590年代の末には画家としての評価を確立し独自の道を歩む。1600年から1614年頃までの14年間は、ローマでカラッチ亡き後のボローニャ派の第一人者として数々の傑作を残した後、1615年からはボローニャへと移り、以後、没するまで同地で活躍をおこなう。19世紀にジョン・ラスキンによって著しく評価が貶められるものの、それまではスランスのアカデミズム画家たちの間で模範的な画家として高く評価されていた(現在は正当な評価によって同時代の最も傑出した画家として数えられている)また一部の作品にはカラヴァッジョの写実的な自然主義の傾向も指摘されるなど、現在も研究が続けられている。グイド・レーニは美男子でありながら生涯独身で、女嫌いや無類の賭博好きという変わった性格であったとも伝えられ、「孤独な隠者」とも呼ばれた。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
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ゴリアテの首を持つダヴィデ (Davide con la testa di Golia)
1601-05年頃 | 220×160cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館

バロックの巨匠グイド・レーニ初期の傑作のひとつ『ゴリアテの首を持つダヴィデ』。アンニーバレ・カラッチ亡き後のボローニャ派の第一人者としてローマで活躍していた頃に描かれたとされる本作の主題は、旧約聖書に登場するエッサイの末息子で、士師サムエルより香油を塗られし竪琴の名手ダヴィデが、敵対していたペリシテ軍の闘士ゴリアテの額を投石によって打ち、うつむけに倒れたところで首を刎ねる逸話≪ダヴィデとゴリアテ≫から、斬首したゴリアテを掲げ視線をおくるダヴィデを描いたもので、均整のとれた美しい英雄の肉体表現や、洗練された衣服と纏う毛皮の丹念な描写は、当時、繁栄を極めた都ローマの第一線で活躍をしていた画家の優れた力量が存分に示されている。

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嬰児虐殺(幼児虐殺) (Strage degli Innocenti) 1611年
268×170cm | 油彩・画布 | ボローニャ国立美術館

グイド・レーニ随一の傑作『嬰児虐殺(幼児虐殺)』。画家として独り立ちをしたローマ時代に描かれた本作の主題は、未来のユダヤの王(つまりイエス)が生誕したのを受け、その幼児の殺害をおこなうために、ユダヤの王ヘデロの命によってベツレヘムに生まれた全ての二歳以下の幼児の虐殺をおこなう兵士と、その母子を描いた≪嬰児虐殺(幼児虐殺)≫で、明瞭で秩序的な主義的様式の中に、劇場性と物語性を加えられたその表現と悲観的情景は、当時からグイド・レーニの代表作として高い評価を受けた。画面中央部分の幼児を殺害する兵士達の鬼気とした表情や、殺害から必死に逃れる母子の緊迫した表現は、本場面の緊張感を存分に伝えてるだけではなく、主題の高い聖性をも示している。また本作の主題≪嬰児虐殺(幼児虐殺)≫の幼児は、キリスト教における最初の殉教者として東西の教会で崇められ、5世紀以降、盛んに描かれた題材のひとつでもある。

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アウロラ(曙) (Aurora) 1612-1614年 | 280×700cm |
フレスコ | カジーノ・ロスピリオージ・パッラヴィチーニ

グイド・レーニの傑作『アウロラ(曙)』。本作は枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼの依頼により、太陽神アポロと月の神セレネを兄姉にもつ曙の女神≪アウロラ≫を描いたもので、二度のローマ滞在で研究した古典芸術への成果と挑戦が明らかに示されており、古典芸術より、より純粋な愛と美を追求した表現がなされている。ラファエロの影響を多大に受けていたこのボローニャ派の巨匠の傑作にはラファエロの再来と賞賛された古典主義的様式の中に、洗練された演劇性、均整の取れた人体の表現、豊かな色彩などを加えた画家独自の美の表現が結集され、これはレーニの次世代のボローニャ派の画家グエルチーノを大きく触発し、本作に対抗するかの如く、グエルチーノは同主題の作品を描いている。

関連:グエルチーノ作『アウロラ(曙)』

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アタランテとヒッポメネス (Atalanta e Ippomene) 1618年
206×297cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

グイド・レーニが描く代表的な神話画のひとつ『アタランテとヒッポメネス』。本作はギリシア(ローマ)神話より、運動に優れた美しきアタランテと結婚するためにヴィーナスから授かった三つの黄金の林檎を競走中に投げるヒッポメネスと、その魅力に走るのをやめ、取りに向かったアタランテを描いた≪アタランテとヒッポメネス≫を描いたもので、計算された構図に配されるアタランテとヒッポメネスは彫刻のように滑らかな肌の質感と、時間が止まったかの如く整然とした描写がなされ、その運動性は身に纏う衣のみである。ナポリのカポディモンテ美術館にも同構図の作品があるが、近年は本作が原作とする説が有力視されている。

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サムソンの勝利 (Sansone vittorioso) 1618年
260×223cm | 油彩・画布 | ボローニャ国立美術館

グイド・レーニによる肉体表現の傑作のひとつ『サムソンの勝利』。暖炉の炉胸部分を覆うためにこのような形で描かれた本作は、旧約聖書におけるマノアと不妊の妻との間に生まれた怪力の師士≪サムソン≫を描いたもので、バロック美術における最も特徴的な躍動感と劇的な構図による男性の典型的な肉体美を表現している。イスラエルの師士であり20年間同地を統治したサムソンは、師士になる前、怪力によるあまり暴力にイスラエルの民からも恐れられ、敵対していたペリシテ人に引き渡されたが、サムソンを縛っていた縄が解かれると、1,000人ものペリシテ人を殺害し、神より与えられた泉の水で喉を潤したとされる。この際、泉の名称が「顎」であったため、後に誤訳され、サムソンが顎から水を飲む奇妙な姿で描かれることになった。

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ネッソスに略奪されるディアネイラ
(Uccisione di Nesso (Storie d'Ercole)) 1621年頃
259×193cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

グイド・レーニの古典的様式が顕著に示される連作神話画の傑作≪ヘラクレスの物語≫より、その代表的な一枚『ネッソスに略奪されるディアネイラ』。本作の主題は、ティリュンス王妃アルクメネと、王に姿を変えたユピテルの間に生まれた神話上の男性で、数々の武勇伝を残した英雄ヘラクレスが、妻である河神の娘ディアネイラをケンタウロスのネッソスに奪い連れ攫われる場面≪ネッソスに略奪されるディアネイラ≫を描いたもので、フェルディナンド・ゴンザーグ公が建設させたヴィラ・ファヴォリタの装飾画として依頼された。本作において最も重要なのは、グイド・レーニがそれまでに培ってきた古典的表現手法と、大胆な構想と高い演劇性による劇的な描写の融合の顕示であり、特にディアネイラとネッソスの激しい運動性の表現は、当時の画家の作品の中でも、最良例のひとつとして挙げられるものである。

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ヘレネの誘拐 (Ratto di Elena) 1631年
253×265cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

グイド・レーニの様式がよく示される代表作のひとつ『ヘレネの誘拐』。本作の主題は、有名な神話≪パリスの審判≫にも登場する女神達の審判者でありトロイア王の息子パリスが、人間の中で最も美しいとされたスパルタ王妃ヘレネを、スパルタ王が不在時に強奪しトロイアへ連れ帰った神話≪ヘレネの誘拐≫を描いたもので、眩いばかりに輝く豊かな色彩によって、極めて優美な印象を与えている。これは既にボローニャ派の古典主義画派の指導者的存在となっていた頃にグイド・レーニが残した作品の大きな特徴であり、本作はそれが存分に示されている。

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