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蚤をとる少年 (Niño espulgándone)1645-1650年頃
137×115cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
スペイン最高の画家のひとりバルトロメ・エステバン・ムリーリョ初期を代表する風俗画の傑作『蚤をとる少年』。当時セビーリャに滞在していたフランドルの商人によって依頼され手がけられたと推測される本作は、蚤をとっている姿から現在『蚤をとる少年』と呼ばれることが多いが、描かれた当初は貧しい身なりや粗末な食物などから『乞食の少年』と題名されていた。セビーリャ派の伝統であったカラヴァッジョに代表される明暗対比による劇的な表現手法≪テネブリズム≫を用い、鋭い観察眼と卓越した技術によって描き出される少年の写実的表現は、スペインバロックの確立者フセペ・デ・リベーラの『エビ足の少年』や、ベラスケスによる傑作『バッコスの勝利(酔っ払いたち)』に代表されるよう、当時のスペインで盛んに描かれたモチーフのひとつであるピカレスク(騎士道小説の理想主義への反動で辛辣に社会を風刺する悪漢小説)的様式を示しており、おそらくは当時、ムリーリョが関心を持っていたフランシスコ修道会の慈善的教義を表していると研究されている。
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