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聖家族(聖家族と眠る幼児イエス) 1655年
(Sainte Famille, dite Sommeil de l'Enfant Jésus ou Silence)
87×118cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義時代の宮廷を代表する画家シャルル・ル・ブラン随一の傑作『聖家族(聖家族と眠る幼児イエス)』。まどろむ幼児イエス、沈黙する幼児イエスとも呼ばれる本作に描かれるのは、聖母マリアと幼子イエスを中心に、聖母マリアの夫ナザレのヨセフやマリアの母アンナや、アンナの夫ヨアキム、洗礼者幼児聖ヨハネ、聖ヨハネを産んだとされる聖母マリアの従姉エリサベツなどを配した≪聖家族≫で、ルネサンス三大巨匠のひとりラファエロ・サンツィオやボローニャ派の巨匠アンニーバレ・カラッチ、古典主義最大の画家のひとりニコラ・プッサンらの作例を規範とし、フランス絵画の合理主義と古典賞賛への最大の導手となったフランス宮廷独自の芸術様式の完成形の一例として知られている。聖母マリアの腕の中で微睡する幼子イエスは、後に己が受ける受難を微塵も感じさせない安らかで穏やかな寝顔を浮かべている。その傍らでは聖母マリアが静かにするよう口元に指を当て、反対側ではマリアの母アンナが幼子イエスの御身体が冷えないよう白布を掛けようとしている。鮮明ながら画面全体を優しく包み込む穏やかな光の描写や、ル・ブランの大きな特徴のひとつである多様で繊細かつ力強い色彩による表現は、観る者に本作の聖性と絵画的芸術性を強く感じさせる。聖母マリアの腕の中で眠る幼子イエス中心にしながら、登場人物の多数を左寄りに配し右側部分に空間を置くことによって、画面の中に構図的な運動性を生み出している。
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