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女占い師 (Diseuse de bonne aventure) 1628年頃
125×175cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
17世紀フランス・カラヴァッジェスキの画家ヴァランタン・ド・ブーローニュ晩年の代表作『女占い師』。作品制作の詳しい詳細や目的は不明であるも、かつてルイ14世が所有し、ヴェルサイユ宮王の間に飾られていたことなどから、当時より高く評価されていたことが知られている本作に描かれるのは、ジプシー風の女占い師が(若い)男を占う場面≪女占い師≫で、イタリアバロック絵画の巨匠カラヴァッジョも『女占い師』を手がけているほか、同時代のフランス古典主義の画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールやシモン・ヴーエも同主題を描いているなど、≪女占い師≫はこの時代を代表する風俗的主題である。本作で女占い師は椅子に座る若い男の手をとり、その未来を占っているが、女占い師の背後では、別の男が女占い師の財布を盗もうと手を伸ばしている。しかしこの女占い師が持つ財布も、女占い師が別の者から盗んだ財布であり、≪盗まれる盗人≫という側面的な教義も本作には示されているのである。画家の晩年の基準作と見なされる本作であるが、ヴァランタンは本作以外にも、この時期に少なくとも2点は≪女占い師≫を主題に作品を描いている。登場人物らに見られる現実を強く感じさせる自然主義的な描写は、当時には既にやや時代遅れであったものの、人間性の探求という画家の作品に貫かれる様式的思想は、本作において驚嘆すべき圧倒的な表現にて示されているのである。
関連:カラヴァッジョ作 『女占い師』
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