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古代風浮彫りのある合奏
(Concert au basrelief antique) 1622-1625年頃
173×214cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
17世紀フランスに生まれたカラヴァッジェスキ一派を代表する画家ヴァランタン・ド・ブーローニュ随一の傑作『合奏(古代の浮彫と合奏)』。本作は古代の浮彫を囲み、若い男女が合奏する場面≪合奏≫を描いた風俗画で、画家は生涯にこの≪合奏≫を主題とした作品を複数枚手がけている。本作はその中でも特に代表作とされる作品で、明らかにカラヴァッジョを始祖とするカラヴァッジェスキ様式の厳しく深い明暗対比や劇的な光と影の表現、非常に高度な自然主義的写実描写が示されている。音楽という主題や、画面右端で観る者の方を向きながら羽根帽子の男が手にするリュート(中世から16〜17世紀にかけてヨーロッパで広く用いられた撥弦楽器)は、カラヴァッジョが初期に手がけた『リュートを弾く若者』などと共通する風俗的モティーフであるほか、隣でギターを奏でる若い女性の顔は、『アレクサンドリアの聖カタリナ』などカラヴァッジョが描く特徴的な女性像の面影を感じさせる。また画面手前や奥で酒の飲む騎士や子供、画面左端でヴァイオリンを弾く若い男や中央でおそらく楽譜を捲る男、それを片肘をつき憂鬱そうに聞く幼子など≪合奏≫の場面の中に様々な動作・表情によって各々の人間性や感情を感じさせる巧みな描写は、本作の特筆すべき点のひとつである。
関連:カラヴァッジョ作 『リュートを弾く若者』
関連:カラヴァッジョ作 『アレクサンドリアの聖カタリナ』
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