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homeページCollection常設展示ルネサンス芸術
Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像

ヤコポ・バッサーノ Jacopo Bassano
1510-1592 | イタリア | 盛期ルネサンス ヴェネツィア派

16世紀後半を代表するヴェネツィア派の巨匠。同派の先人ティツィアーノやルネサンス三大巨匠のひとりラファエロの版画、マニエリスムの画家らを研究することによって、複雑な構図と姿勢によるプロポーションを引き伸ばした人物の描写や寒色を用いた色彩表現、大衆的な写実主義における特殊な光彩表現、情緒的な風景(特に夜景)の描写によって独自の様式を確立し、17世紀イタリア絵画の先駆的存在となる。ヤコポ・バッサーノはヴェネツィア派を代表する画家であるがバッサーノ地方出身の地方画家であり、父フランチェスコから絵画を学んだ後にヴェネツィアへ出てボニファツィオ・デ・ピターティの工房に入り修行時代を過ごす。1540年代からは故郷バッサーノへと戻り、複雑な構図と不自然さの残る人物描写など実験的手法を用いた作品を手がける。1550年代からは祭壇画を多数制作しながら、劇的で壮大さを感じさせる様式へと画風を昇華させた。また故郷バッサーノでは工房を構えており、晩年期の作品には息子のフランチェスコ、レアンドロ、ジロラモらの手が加わっているものが多々存在し、息子たちの作風もヤコポ・バッサーノに倣う様式なので、現在でも帰属が議論される作品も多い。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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東方三博士の礼拝 (Adorazione dei Magi) 1563-1564年頃
94×115cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館

ヤコポ・バッサーノの様式がよく示される代表的な宗教画作例のひとつ『東方三博士の礼拝』。ヴェネツィアのバルトロメオ・デラ・ナーヴェのコレクションから、大公レオポルト・ヴェルヘルムのコレクションを経て、現在はウィーン美術史美術館が所蔵している本作は、未来のユダヤの王たる神の子イエスの降誕を告げる新星を発見した東方の三人の王が、エルサレムでヘロデ王にその出生地を聞いた後、星に導かれベツレヘムの地で神の子イエスを礼拝する場面≪東方三博士の礼拝≫を主題に描かれた作品で、≪羊飼いの礼拝≫と共にヤコポ・バッサーノが生涯のうちに最も数多く手がけた主題のひとつである。青年の王で欧州を指すメルヒオール、長老格の王でアジアを指すカスパル、黒人の王でアフリカを指すバルタザールはそれぞれ神の子イエスへ捧げる黄金、乳香、没薬の三つの贈り物を手にし、未来のユダヤの王への礼拝をおこなう場面は、当時研究を続けていたマニエリスム的な複雑性を持った斜面構成を用いることによってヤコポ・バッサーノ独自の特徴的な運動的でありながら大衆的な場面を表現することに成功している。また詩情を感じさせる情景的な風景描写も本作の極めて大きな特徴のひとつであり、本作ではさまざまな実験的手法を用い作品を手がけたヤコポ・バッサーノの様式の変化を存分に感じることができる。

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【全体図】
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楽園 (Il Paradiso terrestre) 1570-1575年頃
77×109cm | 油彩・画布 | ドーリア・パンフィーリ美術館

ヴェネツィア派の巨匠ヤコポ・バッサーノの代表作『楽園』。本作に描かれるのは伝統的に旧約聖書において創造主である神が地上の塵から創り出した最初の人間アダムと、アダムの肋骨から生まれた最初の女性イブ(エヴァ)や野獣や家畜など大地に住まう動物らが暮らす楽園≪エデンの園≫とされる。本作において最も重要すべき点はバッサーノ一族の大きな特徴となるヴェネツィア派の影響を感じさせる潤沢な色彩と輝きを放つ光の表現に代表される情緒豊かな表現手法であり、諸動物を含める登場人物や繊細な光彩によって表される風景描写の自然的で純粋な表現によってヤコポ・バッサーノはヴェネツィアで随一の画家として広く認められることになった。本作に描かれるのは伝統的に旧約聖書において創造主である父なる神が創りだした楽園≪エデンの園≫とされているが、一部では否定的な意見も述べられている。

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聖ルキアの洗礼を施す聖ウァレンティヌス 1577年頃
(San Valentino battezza santa Lucilla) | 182×127cm |
油彩・画布 | バッサーノ・デル・グラッパ市立美術館

16世紀後半を代表するヴェネツィア派の画家ヤコポ・バッサーノ随一の傑作『聖ルキアの洗礼を施す聖ウァレンティヌス』。本作は3世紀ローマの聖人で、Vielliebchen(=よく愛される者)に名前の由来をもつ聖ウァレンティヌスが、キリスト教を代表する聖女ルキアに洗礼を施す場面を描いたもので、父なる神による強烈な金色の威光に照らされ落ちる柔らかい陰影や、壮大で深い神秘性を感じさせる劇的な表現は、長年、ヤコポ・バッサーノがヴェネツィア派マニエリスム絵画の研究をおこない辿り着いた様式の大きな特徴であり、本作においてそれは、最も効果的かつ独自性を以って示されている。また17世紀イタリア最大の画家のひとりティエポロが、本作で用いられる豊かで大胆な色彩の表現に驚愕したとの逸話も残されている。

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