Introduction of an artist(アーティスト紹介)
■ 

ドッソ・ドッシ Dosso Dossi
1490-1542 | イタリア | 初期ルネサンス フェラーラ派




16世紀に活躍した北イタリア出身のフェラーラ派の画家。本名はGiovanni Luteri。ジョルジョーネティツィアーノを始めとするヴェネツィア派らの画家や巨匠コレッジョの影響を受けながら自身の作風を確立し、マントヴァ公の依頼により兄バッティスタ・ルーテリと共に手がけた作品が同地で好評を博し、都市フェラーラを支配していたエステ家の宮廷画家に招かれ、豊かな色彩と優雅で大胆な構図を用い神話的主題や異教的な文学を主題とした装飾画を制作するほか、宮廷劇や祝典の演出にも携わる。現存する作品総数は約140点。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
■ 

魔女キルケ(魔女メリッサ)

 1523年頃
(Maga Circe (Maga Melissa))
176×174cm | 油彩・画布 | ボルケーゼ美術館(ローマ)

16世紀フェラーラ派を代表する画家ドッソ・ドッシの難解で文学的な魅力に包まれた名作『魔女キルケ(魔女メリッサ)』。本作にはアリオストの≪狂乱のオデュッセウス≫に由来する太陽神ヘリオスと女神ペルセイスとの間に生まれた娘≪魔女キルケ≫が描かれていると伝統的に唱えられているが、神官であったメリッサとする説も有力視されている。また本作の図像的解釈についても諸説唱えられており、研究者によってその回答もまちまちであるが、それは本作に示される難解で文学的な表現にある。自らの魔力によって自身に仇なす者(又は敵と判断する者)をライオンや狼などの獣(や怪物)に変えてしまうアイアイエ島に住む魔女キルケは呪術具らしき人形を見つめ、その手には古文的文献と火が灯される松明が握られている。また足下には円形の魔方陣や武具、犬、花などの植物が配され本作における魔女キルケの魔女たる所以を表現している。≪狂乱のオデュッセウス≫とは航海途中でアイアイエ島に立ち寄ったオデュッセウスとその一行が魔女キルケによってオデュッセウス以外豚に変えられるも、オデュッセウスはヘルメス(メルクリウス)に授けられた薬草モーリュによって魔女キルケの魔法に打ち勝つという伝説的逸話であるが、本作に描かれる魔女キルケは豪華で色彩豊かなヴェネツェア派的特長が色濃く反映されている。

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

人生の三段階の寓意

 1520-25年頃
(Allegoria delle tra etâ della vita)
77.5×111.8cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館(N.Y)

16世紀フェラーラ派の画家ドッソ・ドッシの哲学的構想による代表的な作品『人生の三段階の寓意』。本作に描かれるのは伝統的に人間の一生における幼少期、青年期、老輩期の三段階を同一画面の配し人生の虚ろと儚さを哲学的思想によって象徴的に表現した≪人生の三段階の寓意≫と解釈されており、同主題はジョルジョーネを始めとしたルネサンス期の多くの画家が手がけたことが知られている。本作で示される情緒的で独特の詩情溢れる風景描写は、ドッソ・ドッシの作品の中でも特に秀逸の出来栄えをみせており、この古代ローマの風景を思わせる表現をドナウ派を代表するドイツ・ルネサンスの画家アルブレヒト・アルトドルファーから影響であると指摘する説が唱えられ、ドッソ・ドッシが同画家の作品を見たという根拠はないものの、現在は同調する傾向にある。また本作における幼少期、青年期、老輩期の哲学的解釈は、通常、三世代とも男女共に描かれていることから男女の愛の時間による変化と儚さとされ、幼少期ではそこに愛の意は見られず戯れと好奇心が強く示され、青年期において愛は男女間の最も崇高で支配的な存在としてその絶頂を迎え、老輩期で愛は薄れ現実への直面による争いの種たる存在として解釈されるのが一般的である。なお一部の研究者は本作を、さらに大きな作品から切断された断片であると推測している。

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

ユピテルとメルクリウスと美徳(蝶を描く男)

 1522-24年頃
(Giove, Mercurio e Virtù (Giove dipinge le farfalle))
111.3×150cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館

ドッソ・ドッシを代表する神話的主題作品ひとつ『ユピテルとメルクリウスと美徳』。蝶を描く男とも呼ばれている本作は、主神ユピテルが画家に扮し絵画を制作する中、神々の使者メルクリウスが、絵画の見学を求めた美徳の擬人的表現による女神に対して場を乱さぬよう静止する場面が描かれており、ドッソ・ドッシが強く影響を受けたジョルジョーネティツィアーノを始めとするヴェネツィア派の特徴である豊かで光に満ちた色彩とフェラーラ派独特の難解で文学的な表現の高度な融合を示している。

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

聖家族

 (Sacra Famiglia) 1528-29年頃
169.2×172.8cm | 油彩・画布 | エリザベス二世女王より貸出

16世紀北イタリアで異彩を放つ大画家ドッソ・ドッシを代表する宗教的主題作品ひとつ『聖家族』。本作に描かれるのは、降誕した神の子イエスに聖母マリアや聖母マリアの母聖アンナを配した≪聖家族≫と解釈されているが、ドッソ・ドッシの難解で文学的な表現が幾つか画面の中に散りばめられており、その代表的なものとして、現在も議論され続けている幼子イエスが抱く鶏が上げられる。最も一般的な解釈として、主イエスがユダの裏切りによって逮捕された時に、カイアファの家でキリスト十二弟子の筆頭である聖ペトロがイエスの弟子かと問われ、それを三度否定することを主イエス自らが最後の晩餐時に予告していた≪聖ペトロの悔恨≫の逸話中、主イエスが聖ペトロに言った言葉「あなたは鶏が鳴く前に三度、私を知らないと言うだろう」の予告的描写だとされている。本作の暗中に浮かび上がる聖母マリアを始めとした諸聖人に示される大胆な光彩表現や、全体的に暗い色調の中で絶妙なアクセントになる鮮やかで豊かな色彩配置はドッソ・ドッシの大きな特徴であり、本作においてそれは最も効果的な表現手法として観る者を圧倒する。なお画面左上に配される諸聖人は1627年の目録では聖ペトロと聖パウロとされているも、現在では聖母マリアの夫である聖ヨセフと解釈する説など諸説唱えられている。

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示


Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション