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homeページCollection常設展示ルネサンス芸術
Introduction of an artist(アーティスト紹介)

パルマ・イル・ヴェッキオ Palma il Vecchio
1480頃-1528 | イタリア | 盛期ルネサンス ヴェネツィア派

16世紀初期のヴェネツィア派における穏健派を代表する大画家。明るく豊潤なヴェネツィア派独自の色彩による光と陰影の描写や、単純で安定的な構図、穏やかで詩情的な(風景を含む)表現によって独自の様式を確立。大型の祭壇画、聖会話図を始めとした宗教画のほか、高級娼婦を女神に見立てた肖像を始めとした様々な肖像画や神話画も数多く手がけている。ロンバルディア地方のセリーナ出身であったパルマ・イル・ヴェッキオは、1510年ヴェネツィアへ移り住み、ヴェネツィア派の確立者ジョヴァンニ・ベッリーニや巨匠ジョルジョーネ、そして若きティツィアーノから多大な影響を受け独自の様式を形成、数年後には同地においてティツィアーノと並び称される人気を博した。また画家の甥の息子にあたる後期ヴェネツィア派の巨匠パルマ・イル・ジョーヴァネと区別するためパルマ・イル・ヴェッキオと呼ばれるようになった。作品数は約100点とされるも、パルマ・イル・ヴェッキオの影響下にあったボルドーネの作品との帰属論争の絶えないものも多い。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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聖母被昇天 (Assunta della Vergine) 1513年頃
191×137cm | 油彩・板 | アカデミア美術館(ヴェネツィア)

16世紀ヴェネツィアにおける穏健派を代表する大画家パルマ・イル・ヴェッキオ初期の傑作『聖母被昇天』。パルマ・イル・ヴェッキオが1510年から移り住んだヴェネツィアのサンタ・マリア・マッジョーレ同信会館が旧蔵し、現在は同地を代表する美術館であるアカデミア美術館が所蔵する本作は、死した聖母マリアが、その3日後に復活を遂げ、肉体と魂が天上へと昇天してゆく、13世紀末から聖母の復活に代わり表現されるようになった場面≪聖母被昇天≫を主題に描いたもので、数年後、若きティツィアーノが描いた同主題の代表作『聖母被昇天』に比べ、穏やかで調和と安定に富んだパルマ伝統の表現が示されている。この温和で秩序的な構図や明るく豊かな色彩、調和と平安を感じさせる登場人物のポーズ、後景に広がる詩情的な風景描写などの表現は急速に発展してゆく前衛的なヴェネツィア派内においても、穏健派と呼ばれた独自性を示すほか、画家の最も優れた個性として後世まで広く認知されている。

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【全体図】
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玉座の聖母子と聖ゲオルギウスと聖ルキア(聖会話)
Madonna col Bambino in trono e i santi Giorgio e Lucia
(Sacra conversazione) 1521年頃
310×208cm | 油彩・板 | サント・ステファノ聖堂(ヴェネツィア)

16世紀ヴェネツィアの巨匠パルマ・イル・ヴェッキオを代表する聖会話作品『玉座の聖母子と聖ゲオルギウスと聖ルキア(聖会話)』。本作に描かれるのは奏楽の天使が音楽を奏でる頭上の玉座に鎮座する聖母マリアと幼子イエスを中心に、十四救難聖人のひとりとしても数えられる伝説の騎士聖人聖ゲオルギウスと、眼病の守護聖人であり聖カタリナなどと同じく当時より人気の高かった聖女聖ルキアを配する≪聖会話≫を描いたもので広大な大地が容易に想像できる背景の中に、パルマ・イル・ヴェッキオの温和で明瞭な色彩表現や聖母マリアや聖ルキアに示される甘美性など、画家の最も特徴的な描写が存分に表されている。伝説の騎士聖ゲオルギウスは3世紀末頃から活躍したとされるカッパドキア出身の護民官で、異教の有翼龍を退治した逸話が残されるほか第三回十字軍の守護聖人として最も著名な聖人のひとりである。また聖ルキアは貧者へ財産を分け与えたことから婚約者の怒りを買い、キリスト教徒だと密告された後、娼妓と同等の刑罰を裁判で裁かれ殉教したとされるほか、名がルキア(Lucia=光)を意味することから、ルキアの美しさに心を奪われた求婚者に、原因となる自らの目をくり抜いて与えるも、その求婚者が改宗し、ルキアが天に祈ると目も回復したという逸話が生まれた眼病の守護聖人である。

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【全体図】
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水浴のニンフ (Ninfe in bagno) 1525-1528年
77.5×124cm | 油彩・板(画布) | ウィーン美術史美術館

16世紀に活躍したヴェネツィア派の画家パルマ・イル・ヴェッキオの代表的な神話画作品『水浴のニンフ』。画家が活躍したヴェネツィアのバルトロメオ・デラ・ナーヴェ旧蔵で、大公レオポルト・ヴェルヘルムのコレクションを経て、現在はウィーン美術史美術館が所蔵する本作には、主神ゼウスの娘であり自然現象に宿る神性な女神≪ニンフ≫の水浴場面が理想的風景として描かれている。平行を意識し配されるニンフたちの安定的な構図を用い、温和で柔らかさが特徴的な穏健派と呼ばれたパルマ・イル・ヴェッキオ独自の色彩と詩情溢れる風景描写によって、古代を思わせる理想化された場面が心地よく描かれている。このような裸婦の群像に見られるパルマ・イル・ヴェッキオの卓越した人物描写と色鮮やかな風景描写は当時より好評を博し、以後の画家たちに影響を与えていたことが指摘されている。

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