Description of a work (作品の解説)
2009/11/22掲載
Work figure (作品図)
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日傘

 (El quitasol) 1777年
104×152cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

18世紀のスペインで活躍した巨匠フランシスコ・デ・ゴヤ初期を代表する作品のひとつ『日傘』。本作は画家がサンタ・バルバラ王立タピスリー工場の原画画家として活動していた頃、当時の皇太子夫妻(後のカルロス4世及びマリア・イルサ)の依頼により、同夫妻が住んでいたエル・パルド宮食堂の装飾用タピスリーのための原画のひとつとして制作された作品である。ゴヤを始め複数の画家が原画を手がけた総数63枚にも及ぶ装飾用タピスリー共通の主題は≪愉快に余暇を過ごす民衆≫であるが、本作には当時のゴヤの絵画に対する意欲や挑戦、流行性と様式的傾向が良く示されており、画家を研究する上で欠かすことのできない重要な作品に位置付けられている。画面中央へ配されるマハ(※スペインにおいて伝統的で粋な女性の総称)として描かれた若い娘は流行を感じさせる鮮やかな色彩(ここでは青色)の衣服と黄色のスカートを身に着け、膝の上に子犬を乗せながら土手の上で座っており、傍らの若い男(こちらはマホを連想させる)が若い娘のために日傘を差し出している。そして背景として画面左側にはやや背の高い壁が中央には雲がかかった青空が、画面右側には青々と茂る木々が配されている。本作の主題選定にはジャン・オノレ・フラゴナールによる連作『恋の成り行き』やニコラ・ランクレの作品に基づいた版画など18世紀フランスロココ美術で成立した≪雅宴画(フェート・ギャラント)≫との関係性が指摘されている。また若い男女と男が持つ日傘で三角形の構図が形成される本作の表現的特長に注目しても、日傘によって微妙に変化する若い娘の顔の陰影の描写や明瞭かつ軽快な色彩による衣服の表現などは秀逸の出来栄えであり、絵画に対する高い意欲が感じられる。さらに本作においては下級階層の者にとっては特別な存在であったマハとマホ(※非合法的な活動もおこなっていた)を画題として選定するという人間観察的な側面も見出すことができ、ゴヤの世相や人間への高い関心も示されている点も特に注目すべきである。


【全体図】
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扇子を手に余暇を楽しむ若い娘。本作は画家がサンタ・バルバラ王立タピスリー工場の原画画家として活動していた頃、当時の皇太子夫妻(後のカルロス4世及びマリア・イルサ)の依頼により、同夫妻が住んでいたエル・パルド宮食堂の装飾用タピスリーのための原画のひとつとして制作された作品である。



【扇子を手に余暇を楽しむ若い娘】
鮮やかな色彩は映える娘の衣服。本作の主題選定にはジャン・オノレ・フラゴナールによる連作『恋の成り行き』やニコラ・ランクレの作品に基づいた版画など18世紀フランスロココ美術で成立した≪雅宴画≫との関係性が指摘されている。



【鮮やかな色彩は映える娘の衣服】
日傘を差し出す若い男の姿。ゴヤを始め複数の画家が原画を手がけた総数63枚にも及ぶ装飾用タピスリー共通の主題は≪愉快に余暇を過ごす民衆≫であるが、本作には当時のゴヤの絵画に対する意欲や挑戦、流行性と様式的傾向が良く示されており、画家を研究する上で欠かすことのできない重要な作品に位置付けられている。



【日傘を差し出す若い男の姿】

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