Description of a work (作品の解説)
2004/09/01掲載
Work figure (作品図)
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モナ・リザ(ジョコンダ)

 (Mona Lisa (La Gioconda))
1503-1505年 | 77×53cm | 油彩・板 | ルーヴル美術館

『モナ・リザ』。レオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された、この絵画史上最も名の知れたあまりにも有名な肖像画は、レオナルド自身にとっても特に重要な作品であったと考えられており、『聖アンナと聖母子』、『洗礼者聖ヨハネ』と共にフランソワ一世の招きにより渡ったフランスでの最晩年まで手元に置いていたことが知られている。本作を美術史的観点から名画中の名画と言わしめるのは、一切の筆跡を残さないスフマート(ぼかし技法)による表現に他ならない。このレオナルドによって考案された輪郭線を用いず陰影のみによって対象を表現する薄塗り技法は、同時代最大の巨匠のひとりボッティチェリを始めとするフィレンツェ派の技法とは決定的に異なっており、その完成には膨大な時間と手間がかかる。当時レオナルドが滞在していたサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の廻廊の二本の円柱が両端に描かれている(本作はその両端部分がどこかの時代に切断されたと推測される)ことが研究によって明らかになっている本作で用いられる、肖像画において斜めに対象人物を配する構図は主に初期ネーデルランド絵画で用いられていた構図であり、その後、交友のあったラファエロを始めとする数多くの画家達の肖像画制作の過程において多大な影響を与えた。ヴァザーリ著書『美術家列伝(1550年)』の中のフランチェスコ・デ・ジョコンドの妻リーサ・ゲラルディーニ説からモナ・リザと呼称されるようになった本作の最も大きな謎のひとつであるモデルについてはジュリアーノ・デ・メディチの愛人説、コスタンツァ・ダヴァロス説、自画像説、イザベラ・デステ説、レオナルドによる極めて高度に理想化された人物像とする説など諸説挙げられるも確証を得るに至らず、依然として不明であり今なお研究と議論が続いている。なお本作は1911年に一度盗難に遭うも2年後、フィレンツェで発見された。なお画家と同じくルネサンス三大巨匠のひとりに挙げられる年下のラファエロは本作『モナ・リザ』のスケッチを残しており、このスケッチは本作の研究資料として現在も重要視されている。

追記(2006/09/27):
近年、新たにおなわれた赤外線と3D技術による調査で、これまで解析できなかった絵具の層が解析され、モナ・リザのドレスが薄い透明のガーゼ布によって覆われていることが判明し、16世紀前半のイタリアでは妊婦や出産したばかりの女性がガーゼのドレスを着ていたことから、ジョコンドの妻リーサが次男を出産した直後の1503年頃に描かれたとする説が新たに唱えられた。

追記(2008/01/15):
ドイツのハイデルベルク大学図書館は、同図書館が所蔵している1477年に印刷された古書の欄外(余白部分)に、当時のフィレンツェの役人によって1503年10月に記された「レオナルドは現在、(富豪商人フランチェスコ・デ・ジョコンドの妻である)リーサ・デ・ジョコンド(別名リーサ・ゲラルディーニ)の肖像などを3点の絵画を制作している」との書き込みを発見し、モナ・リザのモデルが同氏であると結論付けた。

追記(2011/02/03):
イタリア文化遺産委員会のビンチェティ委員長は、モナリザのモデルは画家の弟子ジャン・ジャコモ・カプロッティ(通称サライ)であり、両者(師レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子サライ)は同性愛的関係にあったとする説を記者会見で発表。論拠としてモナリザの瞳の中に両者の頭文字「L」と「S」が記されているとしている。

追記(2012/07/24):
イタリアの考古学チームがフィレンツェの聖ウルスラ女子修道院の床を掘り起こしておこなった発掘調査で、モナ・リザのモデルとされるリサ・デ・ジョコンド(リザ・ゲラルディーニ)の遺骨と思われる人骨を発見したとの発表をおこなった。今後の更なる調査が期待される。

追記(2012/09/26):
ジュネーヴ(スイス)に拠点を置くモナリザ基金が26日、予てからレオナルドの真筆論争が絶えなかった若きモナ・リザの作品、通称「アイルワースのモナリザ」が描写や表現的特徴のほか炭素年代測定法や紫外線及び赤外線調査などさまざまな化学的鑑定の結果、真筆であるとの発表をおこなった。しかしルーヴルのものと比べ同作品の素材がカンバスである点など異論も数多く残されており、今後の動向が注目される。


【全体図】
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スフマートを用いた輪郭の表現。本作を美術史的観点から名画中の名画と言わしめるのは、一切の筆跡を残さない為、その完成には膨大な時間と手間がかかる、輪郭線を用いず陰影のみによって対象を表現する薄塗り技法≪スフマート(ぼかし技法)≫による表現に他ならない。



【スフマートを用いた輪郭の表現】
本作で最も印象的に感じられる微笑んだ唇。ジュリアーノ・デ・メディチの愛人説、コスタンツァ・ダヴァロス説、自画像説、イザベラ・デステ説、高度に理想化された人物像とする説、弟子サライなど諸説挙げられており、今なお研究と議論が続いている。



【最も印象的に感じられる微笑んだ唇】
画面左右へ当時画家が滞在していた同教会の廻廊が描かれていることが研究によって明らかになっている本作で用いられる構図は主に初期ネーデルランド絵画に源流のある構図であり、その後、交友のあったラファエロを始めとする数多くの画家達の肖像画制作の過程において多大な影響を与えた。



【斜めに対象人物を配する構図】
交差に組まれる腕。レオナルド自身にとっても特に重要な作品であったと考えられている本作は、『聖アンナと聖母子』、『洗礼者聖ヨハネ』と共にフランソワ一世の招きにより渡ったフランスでの最晩年まで手元に置いていたことが知られている。



【交差に組まれる腕】
退廃的な印象を感じさせる背景描写。風景はレオナルドがおこなっていた地形学的研究と、東洋の山水画を思わせる風景画制作とのしかるべき統合であり、描かれる風景の両端は繋がっていると一部の研究者から指摘されている。



【退廃的な印象を感じさせる背景描写】
左右で高さが異なる水平線の奇異性。岩山、荒野、農道、石橋、河、そして空と非常に簡素な要素で構成される本作の背景であるが、小画面ながら極めて繊細かつ綿密に描写されており、観る者を強く惹きつける。



【高さが異なる水平線の奇異性】

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