■ |
バテシバの水浴 (Bathsheba Bathing) 1485年頃
196×86cm | 油彩・板 | シュトゥットガルト国立美術館 |
15世紀後半に活躍した初期ネーデルランド絵画の画家ハンス・メムリンクの傑作『バテシバの水浴』。おそらくは1485年頃に祭壇画の右翼部分として制作されたと推測される本作に描かれるのは、旧約聖書でエルサレムを首都としたユダヤの王ダヴィデがヘト人ウリヤの妻バテシバ(本来はバト・シェバ)の水浴姿を目撃し、あまりの美しさに自分の妻になるよう、バテシバの夫ウリヤを戦場の任務に就かせ戦死させた後バテシバを娶るも、父なる神に背いたことで愛息アブサロムを始めとした息子たちに死という不幸が訪れ、己のおこないに悔いたダヴィデはバテシバとの間に生まれた末子ソロモンに王の座を譲った逸話≪バテシバの水浴≫であり、流麗でエロティックな印象を如実に感じさせる女性の裸体表現は、初期ネーデルランド絵画において特異な存在感を示している。メムリンクの特徴である弛緩された温和な甘美性や独特の華奢な人物構造によって表現されるバテシバの裸体は、それまでの初期ネーデルランド絵画には殆ど見られない独特の妖艶さと官能性に富んでおり、その魅力は現在においても人々を惹きつけてやまない。なおメムリンクが同時期に描いたとされるダヴィデ王頭部の断片が現シカゴ美術研究所に所蔵され、本作が祭壇画の右翼部分とする根拠となっている。
解説の続きはコチラ |